オーガニック認定パフュームコスメブランド「Hiroko.K」の主宰で、南フランスのLABOにてオーガニック香りを開発する調香師であり、ナチュラルオーガニックコスメの開発者。そして、アロマセラピーアソシエイツを百貨店で展開し、いちはやくナチュラルコスメ(オイル美容)を広めた人物。Hiroko Kondoさんに聞く、取り入れたくなるスキンケアやオーガニック香水、について連載インタビュー。

Ashley読者の皆さん!もうこれでお肌の悩みの解消や正しいオーガニックオイルの使い方、香水の歴史や魅力まで全てを知ることができるかも!? なんとなくの知識よりプロフェッショナルから教わるものって本当に貴重な体験。Hirokoさんのインタビュー連載をぜひお楽しみください。

 

 

HIROKOさんとはじめてお会いしたのは、2017初秋。ライフスタイルブランド「MR.ミスター」・代表みかさんの紹介でHIROKOさん自信のブランドアイテムの[香る会]でイベントセミナーでした。見るからにオーラがある方で、その香りのお話の内容に、どんどん吸い込まれていくような感覚を、今でも覚えています。香水の歴史の話、オーガニックの定義や香りのブレンド等、楽しい時間はあっという間に過ぎていくものです。そんなHIROKOさんからのアドバイス。必見です!

 


 

STILL ROOM 蒸留室のあるヨーロッパの「お屋敷 女主人」

 

もっともピュアな香料である精油は、「essential oil:エッセンシャルオイル」とも呼ばれますよね。

生き生きとした花びら、それは薄くて儚いものですが、植物はその大切な花びらなどをどうやって、雨や朝露、から身を守っているのでしょうか?

バラの花を想像してみてください。バラの花びらは、水滴をかけると花びらの上でコロコロと水滴をはじいていますね。外敵から身を守るための特別なワックス効果のあるものが花びらを守っています。例えば、ダマスクローズの花を水蒸気蒸留法で香りのエッセンスを摂取すると、ダマスクローズの香りが取れます。それは、香りを放つ油膜のベールだったのです。

植物が生き抜くためのその命綱(もっとも大切な要素)を、水蒸気蒸留法で抽出したものです。

この水蒸気蒸留法は中世のヨーロッパで広く用いられていました。

現代でも中東のチュニジアなど地中海を囲む国々では、各家庭の庭先で水蒸気蒸留法を活用してしています。植物、花びらなど、を蒸留して、蒸留ハーブ水(HYDOROSPL)ハイドロソルを作り、愛飲しています。

 

 

その昔、ヨーロッパの貴族のお城や大邸宅のキッチンの奥には、その館の女主人しか入れない秘密の隠し部屋があり、「Still Room:蒸留室」と呼ばれていました。

そこでは、庭のハーブや果物を蒸留して薬や化粧品、また、蒸留したものだけでなく、ジャムやワイン、家具のツヤ出しクリームなど、さまざまな生活必需品を作っていました。

そのときどきの女主人が工夫を重ねて、代々受け継がれてきたその家だけの秘伝のレシピがあり、大切に守られていました。

このように、ヨーロッパには、草花や果物を蒸留する習慣があり、蒸留酒であるウイスキーやコニャックも古くから親しまれてきました。

ウイスキーと精油は、同じ「蒸留」という方法によって作られることから、実は共通点がいくつもあるのです。

 

 

シングルモルトウイスキー

スコットランドのアイラ島は、ビート(泥炭)の香りが強い特有のシングルモルトを生産している有名な蒸留所ブランドがあることで有名です。

それらの蒸留所の一つBruichladdich(ブルイックラディ)というブランドを再興した人物に何度かお目にかかりました。

Jim McEwan(ジム・マッキュワン)は、頑固にアイラ島の大麦を使って地元の復興を成し遂げたシングルモルトウイスキーの生産者で、ウイスキー業界でもユニークな人物として有名な方です

私は以前、Jimにオーガニックの香水のもとになる80度の原酒を作ってもらっていました。

フランスのECOCERTの許可を取り、材料証明、INCI名称* を登録して、はるばるスコットランドから南フランスの弊社の協力工場へ輸送して、中世のノストラダムスたちが作っていたように、石油系化学合成成分を使わずに香水を作りました。

その折、Jimは「ウイスキーと香水は作り方が似ている」と話してくれました。

ウイスキーは、78〜80度の原酒を樽に入れ、最低3年間は寝かせます。

樽に入れ、3年未満のものはスコットランドの規則で、ウイスキーとして販売できません。

ウイスキーの原酒は日本の麦焼酎と香りが似ています。

ウイスキーの場合は、大麦のモルト(麦芽)を乾燥させるために熱を加えますが、その熱源にビート(泥炭)を使うと、ウイスキーにあの独特の渋いスモーキーな香りがつきます。

私がJimに作ってもらっていたのは、ビートを使わずに作ったエタノール(アルコール)でしたので、香りは麦のとてもフルーティーなものでした。

 

一般的にスコットランドのモルトウイスキーは、大麦のモルトにビートの煙臭を染み込ませて作ります。

そして、さまざまな行程を経た後、最終的に蒸留して樽に入れるので、このビートの香りがボトムベースとなり、樽の木の香りが3年かけて蒸留酒に移っていきます。

つまり、上質の蒸留酒に木の香りを移したものがモルトウイスキー。

一方、蒸留した超微粒子の精油に同じく蒸留した粒子の細かいエタノールが混ざることで、同じように蒸留法で微粒子化された物質同士が溶け合い、美しい香りを作るのが私にとってのアルコール香水なのです。

ですから、とても新鮮で浄化されたものになるのだと思っています。

 

 

CMの演出

10年ほど前に、SMAPの木村拓哉さんが出演した国内大手のウイスキーメーカーのCM、覚えていらっしゃるでしょうか?

ウイスキーのグラスを片手に、鍛え上げられたボディに、さらっとシャツを羽織り、グラスに浸した指で首筋を撫でる仕草がありました。

あたかもウイスキーの雫が香水かのように・・・。

作り方がピュアな精油と同じで、ウイスキーも香料の一種であると思う私にとっては、じつに印象的なCMでした。

 

 

”利き香り”

ところで、日本には蒸留アルコールとして「焼酎」があります。

蒸留酒は、「spirit」とも呼ばれますが、精神や心といった「真髄」を表す言葉と同じなのは興味深いですね。

この焼酎にも、もちろん香りがあります。

私は以前、焼酎ばかりを集めたバーで、利き酒ならぬ”利き香り”をしたことがあります。

店主が珍しがって話してくれたところによると、私と同じように”利き香り”をしていた人が以前にもいたそうで、フランスからいらしたシャネルの香水を作っている方だったと教えてくださいました。

「目の付け所が私と同じだったとは!」と、とても感激したことを覚えています。

 

 

* INCIという国際命名法ルールに基づいた化粧品成分の国際表示名称のこと。

 

(本文中のウイスキーは、スコッチ・ウイスキーを指しています。)