昔、寂れたラーメン屋の小さなテレビでこの映画が流れてて、観始めたら画面に釘付けになってしまいラーメンが伸びちまった思い出がある。それくらい魅力的な作品である。そもそもロードムービーって奴には目が無いのだ。

 

主人公は田舎町アリゾナに住む少女オリーブ。なんともブサイクでおデブちゃんな彼女が、全米美少女コンテストでひょんなことから地区代表に選ばれた。オリーブ一家は黄色のオンボロ車に乗り、決戦の地カリフォルニアを目指すことに。人生の勝ち組になることだけに没頭する父親、ニーチェに倣って信念で沈黙を貫く兄、ゲイで自殺未遂の叔父、ヘロイン吸引が原因で老人ホームを追い出された不良ジジイ、そしてバラバラ家族をまとめようと奮闘する母親。そんな落ちこぼれ家族の、奇妙でハートフルな旅を描くロードムービーである。

 

©2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved

 

 

大概こんな風変わりな家族の中で唯一まともなのは母親だ。いや、一般的な家庭でも一番頼れるのは母ちゃんなのである。演じるのはトニ・コレットさん、『シックス・センス』で “I see dead people”のお母さん役の人ね。とにかく肩幅が広くてイイ、元来より肩幅が広い女性には信頼をおける人が多いのだ。

この映画で脚光を浴びた俳優さんは多くて、おじいさん役のアラン・アーキンは今作で見事にアカデミー助演男優賞を受賞、ゲイの叔父さん役のスティーヴ・カレルはこの後『40歳の童貞男』で人気者となり今ではコメディでもシリアスでもイケる万能役者として活躍されている。

でも、何と言っても最高にキュートな演技で魅了してくれたのはぽっちゃり少女を演じたアビゲイル・ブレスリンちゃん。この映画の成功はひとえに彼女の演技の賜物なんじゃないかっていうくらい素晴らしい。

 

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作中で家族の乗っていたオンボロのマイクロバスが故障してしまい、みんなで力を合わせてバスを押しスピードが上がったら飛び乗るというスタイルで旅を続ける。これって西部開拓時代の幌馬車に似てて、貧しい移民がアメリカン・ドリームを夢見て荒野を旅する、その際にやはり家族総出で幌馬車を押して前に前に進んでいたそうだ。

何度裏切られても夢に向かってひた走る、この映画はそういうアメリカンスピリッツの象徴なのかもしれない。なので、特にアメリカでは支持されて8億ドルの製作費にも関わらず最終的には100億ドルのメガヒットを記録する大成功を収めたのだ。

 

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私は“笑って泣ける”とかいう宣伝文句を聞くとなんか嘘くさくて信じないのだが(笑)、この作品は珍しくそれに当てはまるゲラゲラ笑って、ヒクヒク泣ける傑作だと思う。落ち込んだ時、勇気が出せない時、この映画はあなたの背中をそっと押してくれるだろう。

最後は劇中の名言で

「負け犬って言うのはな、負けるのが怖くて最初から何にもやらない奴のことだ!」