現在公開中の映画『ジュディ 虹の彼方に』は、20世紀を代表するエンターティナーで女優のジュディ・ガーランドの生涯を描いた映画です。
ジュディ・ガーランドといっても1969年に亡くなっているので、「誰?」と思う人が多いかもしれません。ですが、『オズの魔法使い』でドロシーを演じた女の子と説明すると、「ああ!」とわかってもらえるし、彼女の終生のテーマ曲となった「オーバー・ザ・レインボー/虹の彼方に」は誰もが知る名曲です。

実は私、中学生の頃に偶然「若草の頃」というジュディ・ガーランドの映画を観て以来、彼女のファンになり、当時CDを取り寄せてベスト盤を買ったという自分で言うのもなんですが、珍しいタイプだったようで、ジュディ・ガーランドの生涯をこれまた大好きなレネー・ゼルウィガーが演じると聞いて、個人的にとても楽しみにしていたのです。(もちろん当時の同級生にジュディ・ガーランドの話が通じる友人はひとりもいません・・・)

私が大好きだった映画『若草の頃』は、『オズの魔法使い』から5年後の、ジュディが美しい大人の女性へと成長していた頃の作品で、ジュディがとても輝いて見え、ストーリーも単純だけど幸せな家族の話で、好きな男の子ができて、やきもきするいわゆる青春映画です。
その映画でジュディが披露する歌声がとても素敵で、かわいくて、楽しくて。今考えるとよく中学生の時にこのベスト盤を取り寄せたなぁと思うのですが、知らない間に中学生の私は彼女の歌に、声に魅せられ、この映画がジュディの壮絶な人生を通して描きたかったものを、すでに受け取っていたのかもしれません。

当時はネットで検索なんてできない時代なので、ウィキペディアで彼女の生涯を知れるわけもなく、幸せそうで楽しそうだと思っていたジュディの生涯を知ったのは、取り寄せたベスト盤のライナーノーツでした。晩年は不眠症や不安神経症に悩まされ、入退院を繰り返し、1969年6月22日に鎮痛剤の過剰摂取により47歳で急遽したことを知り、幸せそうなジュディしか知らなかった私はショックを受けたことを覚えています。

私が知らない晩年のジュディ・ガーランドがどんな毎日を過ごしていたのか、壮絶な人生ってどんな人生だったんだろう、47歳で亡くなるまで、彼女は少しでも幸せな時間を過ごせたんだろうか?私の好きだった女優さんだったからこそ、この映画を観て知りたかったのです。

そして私の目に飛び込んできたのは、私が大好きだった少女時代のジュディが、ハードスケジュールをこなすため映画会社から薬づけにされていたこと。やがてアルコールが加わり、神経を病み情緒不安定となった晩年の凄惨な姿。でも、それ以上に、私が初めて目にする歌手としての力強さ、人の心の奥底まで入ってくるエンターティナーとしての実力をスクリーンで目の当たりにしたのでした。でも、精神的にも身体的にも不安定なジュディはせっかくのチャンスを潰してしまうような醜態をさらし、自分が一番輝けるはずのステージを自分から遠ざけてしまいます。

そんなジュディが最高に輝き、そして救われるシーンがあります。そのシーンを観て、この映画がつくられた思いとジュディ・ガーランドというエンターティナーに対する敬意と愛情を感じて、彼女のことが大好きだった私は本当にこの映画を観てよかったと思いました。
銀幕に隠されていた薬漬けにされていた過去があっても、どんなに惨めな姿を見せても、彼女が映画を通して私たちに与えてくれた感動が、カタチとなって彼女を助けたんだなと思うと、彼女の歌が好きで何度も繰り返し映画を観た中学生の頃を思い出し、とても幸せな気持ちになりました。
この映画でジュディ・ガーランドを演じ、本年度アカデミー賞主演女優賞を受賞したレネー・ゼルウィガー。一度もオスカーを取ることのなかったジュディに対するレネーの授賞式スピーチが、映画を観たあとにみるととても心に響きます。ぜひ鑑賞後にもう一度観てみてください。
授賞式スピーチ全文
「この作品は、私のキャリアにおいて特別な出会いであり、意義深い体験でした。今回も言わせて。シンシア、スカーレット、シャーリズ、シアーシャ、同じカテゴリーでノミネートされて光栄です。デヴィッド、キャメロン、グールド監督、あなたの作品に携われたことをとても光栄に思います。
私を応援してくれるマット、アンナ、ジェフ、それにエリック、ポール、ゲイリー、ジェシー、フィン、ルーファス、ジュデイを称えるこの作品のすべての関係者に感謝します。
CAAのピーター、ブライアン、ケヴィン、広報のニコールとドム、ナンシー、25年間ありがとう。ジョンも25年間付き添ってくれてありがとう。
私がひるむほど大きな夢を掲げ、ステキな仕事と喜び、感謝をもたらしてくれた。何も持たずに来た移民の仲間たち、夢はかないます、これを見て。
ドリュー、ブランディ、ジュディ、スートン、エヴァ、いつも支えてくれて不可能はないと思わせてくれてありがとう。
私はこの1年ジュディ・ガーランドを大勢と称え合いました。世代や文化を超えた、さまざまな人たちとです。そして気づきました。ヒーローには私たちを1つにする力があります。優れた人のおかげで、私たちも“最高の自分”を見いだせる。ヒーローを見ると、私たちの心は1つになります。それが大事なんです。
アームストロング、ライド、ウエルタ、ウィリアムズ姉妹、ボブ・ディラン、スコセッシ、ロジャース、タブマン、私たちは師を敬い、勇敢な軍人を称えます。救急隊員や消防士もです。
ヒーローを称えるとき、私たちは1つであることを思い出すのです。ジュディはオスカーを手にできませんでした。映画を通して巻き起こった彼女への称賛が、受賞につながったと信じています。そして、今この瞬間が証明しています。
ジュディの飛び抜けた個性が時代を超えて愛されることを。
誰に対しても分け隔てない寛大な心の持ち主でした。それはどんな芸術的功績にも勝ります。ジュディ、あなたは私たちを結びつけるヒーローです。この賞を、あなたに捧げます。」
映画『ジュディ 虹の彼方に』は現在公開中です!是非この感動を映画館で!!
公開中『ジュディ 虹の彼方に』
中洲大洋、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、T・ジョイ博多 他
監督:ルパート・グールド
出演:レネー・ゼルウィガー、ジェシー・バックリー、フィン・ウィットロック、
ルーファス・シーウェル、マイケル・ガンボン