大学1年生の頃、テスト期間になるとみんなで学食に集まって勉強することが度々ありました。私は1年間予備校に通い、一般入試をパスして大学に進学したのですが、予備校生の頃から勉強中に聞く音楽はEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)でした。
大学生になってもその癖は治らず、友達と集まって勉強していてもEDMで耳を塞いで勉強していました。「勉強してんのにまーたヤバい曲聞いてるよ」と友達によく言われてたなあ。
EDMが私の作業用BGMになったバックグラウンド
EDMはシンセサイザーやシーケンサーを用い、クラブないしは音楽を中心に据えるエンターテインメントの場において、その場の人々を踊らせるという目的で作られたダンスミュージックのことです。明確なジャンルを指すものではなく、ロックやジャズ、ヒップホップなどと同じように様々なサブジャンルを包括した広義の用語と言えます。派生したサブジャンルとしてハウス、トランス、テクノ、ダブステップなどがあります。
今も好きなアルバムのひとつですが、当時19歳、大学1年生だった私の1番のお気に入りアルバムはSteve Aokiの『Steve Aoki Presents Kolony』(2017)でした。EDMという枠を飛び越え、メインストリームでもレジデントとなったSteve Aokiが、ヒップホップを核とし、トラップやフューチャー・ベースを敷いたアルバムです。
収録曲「How Else (feat. Rich The Kid & Ilovemakonnen)」と、Yellow Clawとのコラボ曲「Lit (feat. Gucci Mane & T-Pain)」の2曲が大好きでした。いつ聞いてもかっこいい。清々する。
私がいつからEDMを好きかというと、高校2年生、17歳の頃からだと思います。17歳の私はSkrillexの「Dirty Vibe (with Diplo, CL, & G-Dragon)」(2014)が好きだったな。「Dirty Vibe (with Diplo, CL, & G-Dragon)」が好きだった理由として、SkrillexもMVも、私の好みのビジュアルでそれも100点満点だったということもあると思います。
そして、ここまでに挙げた3曲に共通して言えることはBPMが異常に高い。それぞれBPM150~160程度だと思います。
BPMと共に加速する行動速度
BPMというのは「Beats Per Minute」の略で、直訳すると「1分間当たりの拍数」。
つまり1分間に何拍打たれるかを数値化したものです。脈拍の話でいえば、人間の心臓のBPMは平常時で60〜100くらいだと言われています。軽い歩行で78〜93、ランニングになると110〜133程度だそうです。
また、認知的負担の低い作業中に聴く音楽に関して、作業のペースに合う適切なBPMであれば作業効率が上がる可能性があるという研究結果が出ています。どういうことかというと、歩行中に音楽を聴いていると足が繰り出されるテンポが音楽のテンポと重なり、足音と音楽が共鳴することありますよね。そういうことです。
そういえばジブリ映画「となりのトトロ」の「さんぽ」、のんびりとしたさんぽにぴったりなように感じますが実はBPM120もあるんです。実際はさんぽというより競歩になってしまいますね。まさかの本末転倒。
また、2004年、英国の自動車関連の調査・プロモーション機関であるRAC Foundationから、自動車の運転に危険な曲リストと安全な曲リストが発表されました。最も危険であると言われた曲は、リヒャルト・ワーグナーの「ワルキューレの騎行」(1856)。BPM60を超えるハイテンポの音を90デシベル以上のボリュームで聞くと、心臓の動悸が早くなって血圧が上がるため、ドライバーの危険回避の動作が約2割遅れるそうです。
では、BPMが高い曲のメリットってどこにあるんでしょうか。
エレクトロニック効いてアドレナリン・ジャンキー
BPMが高い曲、エレクトロニックミュージックを聴くメリットはこれしかない。エキサイトできることです。
テンポの速い(BPMの高い)音楽聴収により、興奮を喚起させる効果があるという研究結果が実際に発表されています。アドレナリンというホルモンが副腎髄質から血中へ放出されることにより、「闘争と逃走の神経 (=Fight and Flight)」と呼ばれる交感神経を興奮状態にたらしめるのです。アドレナリンが血中に放出されると心拍数や血圧を上げ、瞳孔を開きブドウ糖の血中濃度(血糖値)を上げる作用があります。

出典: Wikipedia
勉強は認知的負担の大きい作業だと思います。歩行と比べたら一目瞭然ですよね。そう考えると、BPM150オーバーの曲を聴いていた私はオートマチック的に勉強をしていたのかもしれません。ひとつひとつを深層まで理解するというよりは目の前に繰り広げられていく事実をスキャンしていく。携帯のスクリーンショットのように。
だからBPM150超えの音楽を聴きながらでも認知的負担が小さくて済み、また、行動速度が加速していたために作業効率が良いと感じていたんだと思います。EDMを聞きながら、ということと勉強自体が嫌いな方ではなかったことが相まって、興奮状態というか妙なハイテンションで勉強していることが多かったような気がする。
今でも知識を体得する時や、記事を執筆している時はエレクトロニックミュージックを聴いています。効かせています。
最近のお気に入りは、ハウスリスナーなら誰もがご存じ、シカゴ・ハウスのオリジネイターMarshall Jeffersonの「Move Your Body」(1986) 、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの言わずと知れたバガテル「エリーゼのために」をダブステップ調にRemixしたKlutchの「Beethoven – Fur Elise (Klutch Remix)」(2018)、10代でデビューを果たし、アブストラクトなサウンド、スタイル、テンポなどを自由自在に操る新鋭プロデューサーKai Whiston の新曲「Boyei」(2020)です。どれも作業速度を急加速させ、トリガーハッピーな気分でのパフォーマンスを実現してくれます。
エレクトロニックミュージックで全身に熱を感じて
もっとアドレナリンを放出させたいという方は、エレクトロニコア、ハードコアの寵児的存在Lil Texasの楽曲を聞いてみてください。2019年にリリースされた「Whip That Neck」がおすすめです。BPM200のガバキックを全身全霊に向けて食らわせてきます。
間違ってもドライブで流さないようにしてくださいね。あなたが事故を起こす前に、車が爆発してもおかしくない赫然たる勢いのある曲です。Lil Texas本人よく壊れないよね。