読書の秋、食欲の秋、スポーツの秋。あなたはどんな秋をお過ごしですか?

私は、虫の声が響く澄み渡った時間が心地良くて、映画鑑賞や読書、芸術の再考と珈琲に耽る長夜を毎日も繰り返しています。私に訪れたのは芸術の秋です。

芸術の秋到来、ということで…

桶田コレクションの現代アート作品を金沢21世紀美術館で観たい!

Image by 村上隆 《Untitled》 ©2018 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. Courtesy Perrotin


私のように芸術の秋をお過ごしのあなたに朗報です。勿論私にも朗報です。

桶⽥コレクションの展覧会「The World:From The OKETA COLLECTION 世界は今:アートとつながる」の開催が決定しました。会場は金沢21世紀美術館。現代アートの聖地とも言えるこの最高のロケーションにて、10月24日から11月23日まで開催される予定です。

桶⽥俊⼆・聖⼦夫妻/photo: Daisaku OOZU


コレクターの桶⽥俊⼆・聖⼦夫妻は2000年代から骨董や現代アート(コンテンポラリーアート)をコレクションしています。昨年4月には初の展覧会「LOVE @ FIRST SIGHT」を開催、今年7月には第2弾「A NEW DECADE」を開催し、コレクションの一部を一般公開しました。今回の展覧会では板谷波山、岡部嶺男などが手掛けた骨董作品に加え、草間彌生や村上隆、奈良美智、名和晃平、ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter)、カウズ(KAWS)、ダニエル・アーシャム(Daniel Arsham)など、著名作家たちによる約50作品ものコンテンポラリーアートが展覧されるそうです。

行きたいなあ。

実は私、最近美術館に行けていません。芸術の秋をやりきれていない。でも美術館は大好きなんです。基本インドアな私ですが、美術館に行けるとなると、前日まで重かった腰も玄関のドアも驚くほどに軽く感じるんです。(美術館に行ったとて文字通りのインドアなのですが。)

私がなぜ美術館に足を運ぶのか。それは芸術を経験するためです。

非凡な空間でなくとも鑑賞可能という事実

© 2020 ISSEY MIYAKE INC.


でも「現代アート」に限定してよく考えてみると、わざわざ美術館へ足を運ばなくとも日常生活の中に溢れていているし、触れる事ができる気がします。

携帯やタブレットといった端末の扉を開けばそこに広がるのはいわば縮小された美術館。実体と寸分違い無く目に飛び込んでくる色や形態。どんな人がどんなコンセプトを持ってこの作品を製作したのか、作品誕生の瞬間やバックグラウンドまでも簡単に、そして詳細に知ることだって可能。

© Hajime Sorayama Image by STELLA McCARTNEY


キャンバスから服に移行された芸術作品も少なくありません。

例えば、ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)がブランドの価値を再定義する新ヴィジョン「AtoZ」にジェフ・クーンズ(Jeff Koons)やオラファー・エリアソン(Olafur Eliasson)、空山基といった現代アーティストを起用。2020-2021awをもってのブランド休止が発表され話題となったイッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)が、日本を代表する現代アーティスト横尾忠則と共に⾐服の可能性を追求する新プロジェクト「TADANORI YOKOO ISSEY MIYAKE」を始動。

芸術作品を身に纏うことも、生活を共にすることも可能なのです。

©YAYOI KUSAMA


他にも、イギリスのエリザベス2世の御用達の指名を受けるなど世界有数のシャンパンブランドとして君臨するシャンパーニュ・メゾン「ヴーヴ・クリコ(Veuve Clicquot)」が草間彌生とのコラボレーションボトルを発表。

クリストファー・ノーラン監督最新作映画『TENET』の主題歌に起用されたトラヴィス・スコット(Travis Scott)の新曲「FRANCHISE」のアルバムジャケットを手掛けたのは、今回金沢21世紀美術館で開催される展覧会において桶田コレクションからの出展も予定されているジョージ・コンド(George Condo)。

現代アートは私達の日常のあらゆる場所に“非日常”を展開しています。

Image by Travis Scott .com


現在性以外の要因から来る現代アートの臨場感


現代アートには毎日触れる事ができる。

それでも私は現代アートを美術館で経験したいと思うんです。どうしてだと思いますか?

それは、臨場感を知覚したいからです。

例えば今、ZOOMというコミュニケーションツールが流行っていますよね。ZOOMのビデオ通話を用いれば、いつでもどこでも、しかもほぼリアルタイムで人と会う事ができる。

しかしZOOM内で会うことと、直接会うこととを比べた時、どちらの方が現実味を帯びていますか?臨場感を感じられますか?二者間の会話に、より没入できるのはどちらでしょう。相手の笑顔を見てより多幸感を得られるのはどちらでしょう。

©電子情報通信学会2018


臨場感を得るために人は様々な感覚要素を統合しなくてはなりません。

自己の周りに空間的な拡がりを感じる感覚やその空間への没入感といった包囲感、そこに自分自身を感じる自己存在感、対象自体の質感やボリューム感、対象に対して魂が感じる快不快といった情感、自己から対象に作用し対象から自己に作用するインタラクティブ感。

臨場感は、そういった外的要因・内的要因による複合的な感覚要素から生まれるのです。

その臨場感を得るために私は美術館へ行きたい。空間に、作品に没入したいしそこに自分を感じたい。作品の表面を目で触りたい。実体の大小に驚きたい。作品に訴えかけられたいし、自分の意見を訴えたい。

難解であり同時に手軽である現代アートだからこそ作品のリアリティとプレッシャーを感じたい。

Jeff Koons《Balloon Rabbit》© Jeff Koons


例えばジェフ・クーンズ(Jeff Koons)のバルーン・アニマル(Balloon Animal)。実際は重たいステンレスで出来た彫刻作品なのですが、一見するとまるで膨れ上がった本物の風船のようなんです。そういう立体感や曲線の上で反射する光、“精密”すぎるキッチュ性。実体を観ることでその全てから臨場感を経験できます。

現代アートだって当然、美術館で観るに相応しい逸物です。

だから金沢21世紀美術館、是非行きたいな。でもここで「行かない」という判断をしたとする。その判断も今は、逸物と言えるのかもしれないと思うと悩んじゃうな。

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