人は誰しも過去を背負いながら、未来の方へ足を繰り出すことで生きている。

足を止めることは出来ないが、時々背負った過去を顧みることはできる。しかし本人が振り返らず沈黙を守り通してしまえば、過去やそれに追従する感情は、その本人により黙殺される。

そしてそれらを表層的に黙殺できたとしても、深層的に黙殺することはできない。

人間の闇や歪みの具現化「ホムンクルス」

©2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ


実写映画『ホムンクルス』の公開日が2021年4月2日に決定。全国公開後、動画配信サイトNetflixにて全世界独占配信予定だ。

綾野剛が主演を、『呪怨』(2002)を代表作とする日本ホラー界の巨匠・清水崇が監督を務める。エログロナンセンスな「ホムンクルス」のビジュアル表現にも期待が寄せられている。

人間(肉体)というタマネギの皮をむいていったら、その人の〝魂〟はどんな形をしているのか。

そんなことを考えながら、山本英夫は原作漫画『ホムンクルス』を描いたという。

映画『ア・ホール・イン・ザ・ヘッド』においてバート・フーゲスに語られ、ジョン・レノンが志願したことでムーブメントとなり、大麻や幻覚剤、またヨガの呼吸法によって起こることを永続的に生じさせることができる「トレパネーション」は日本では違法行為とされている。

©山本英夫/小学館


そんなトレパネーションを題材とした『ホムンクルス』は人々の好奇心を掻き立て、8年もの間、週刊ビッグコミックスピリッツで連載された。

なお、単行本にはトレパネーションが非常に危険な行為であり、絶対に真似しないようにとの旨が注意書きに記されている。

人種や性別の枠組みを取り払い、マイノリティを受容したカウンターカルチャーやアンダーグラウンドカルチャー、軍隊経験や当時の労働者達の厳しい現実を教えてくれるプロレタリア文学、人々の心の拠り所となる欲望をドラマチックに描くエログロナンセンスを愛する私も大好きな作品です。

©山本英夫/小学館


記憶も社会的地位も失くした主人公の男・名越 進(なこし すすむ)は、高額な報酬を受け取る代わりに頭蓋骨に穴を開ける実験「トレパネーション」を受けたことで左目に人間の心の歪みが異形「ホムンクルス」として見えるようになってしまう。その中で男は、自身の記憶や過去を手繰り寄せていく。未来と連続するそれらと共に、男が運命の歯車を動かしていくというストーリー。

誰にでも忘れたいことの一つや二つ、あって当然だと思います。そして忘れてしまうことも、当然だと思う。

傷付けたことへの後悔が薄れていくこと、恐怖が緩和されていくこと、愛していた人の顔が思い出せなくなること、声がだんだん小さくなり聞こえなくなっていくこと。

人間は長い時間をかけて、表層的に忘れていってしまうその全てを魂に刻む。

あの人の気高さや気丈さ、優しさや美しさはそういう経験の上に成り立っているのかもしれない。

そんなことを考えさせられる名作『ホムンクルス』。実写映画をより楽しむために、原作漫画も読んでみては如何でしょうか。

自分の魂と対峙する機会にきっとなるはずです。

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