映画のコラムでは禁じ手だと思いますが、あえてネタバレさせて頂こう!笑

主人公パターソンはニュージャージー州パターソン市に住むバスドライバー。バスドライバーを演じるのはアダム・ドライバー、なんかややこしいなぁ。

パターソン は朝起きて妻ローラにキスをし、バスを走らせる。帰宅後は妻と夕食を食べ、愛犬マーヴィンと夜の散歩、途中バーに立ち寄り一杯だけビールを飲んで帰る。そのルーティンを毎日繰り返す、そんな一週間を描いた映画です。

え?そんだけ??

そうなんです、それだけのシンプルなストーリーなのです。

なのに、とってもユニークで優しくて、豊かな時間がゆったりと流れる作品になっています。

 

Photo by MARY CYBULSKI ©︎2016 Inkjet Inc.All Rights Reserved

 

主人公パターソンの趣味は詩を書くこと。

バスのフロントガラスに広がる街並みを眺め、乗客の他愛もない会話に耳を傾け、家で明るく奔放な妻と過ごすうちに、彼の中に詩が生まれます。

さっき、何の変哲もない同じような日常と書いたけど、彼にとっては毎日が新しくて、目にするもの耳に聞こえてくるもの全てが心踊らす発見に感じるのです。

演じるアダム・ドライバーは新スター・ウォーズシリーズの敵役カイロ・レンとして有名ですが、すごく細やかな演技に定評のある俳優さんで(スター・ウォーズではすぐキレて仮面も踏み潰しちゃうけど笑)、今作でもちょっとした目や眉の動きで感情を表現してユーモアたっぷりに演じられています。

 

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僕はこの映画を初めて映画館で観た時に、この感動は今だけのものじゃなくて多分10年後に観ても違った味わいをするんだろうなと感じました。いつまでも寄り添っていたい作品だな、と。

ただ願わくば、10代や20代の方にご覧になって欲しいなと思います。

もしかしたら単調で退屈に思われるかもしれない、スーパーヒーローも出てこないしCGも一切ないし。

でも、人生は刺激ばかり多くても疲れちゃうし、逆に毎日が平凡だなって悲観するのも勿体なくて、この主人公みたいに普段の日常をいつもと違ったフィルターから眺めてみる、それだけで今日という一日が輝き出すかもしれません。

 

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で、劇中に出てるこのワンコ、マーヴィンっていうブルドッグなのですが、コイツの演技が上手い!

カンヌ映画祭って有名な映画祭の、一番名誉ある賞を「パルム・ドール賞」と言うのですが

そのカンヌで最も優れた演技をする犬に贈られる賞を「パルム・ドッグ賞」と言いまして(笑)、満場一致で受賞されました!

そして、実はメス犬です。

 

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今作には永瀬正敏さんも出演されています。とても重要な役どころです。

彼にとっては「ミステリー・トレイン」以来27年ぶりのジャームッシュ作品ということになります。

ジム・ジャームッシュ監督の名前を聞いたことはないかもしれませんが、80年代後半から90年代にかけてミニシアターブームと言われる時代があって。ジャームッシュといえばインディーズ界の寵児というか、その独特のオフビートな世界観が若者のハートを鷲掴みにして、僕も当時レンタルビデオ屋で借り漁ってました。

古い作品なんか今観ても全然新鮮でカッコいいんですよ。もしこの『パターソン』を観て”この感じ好きだなぁ”と思われたら、ジャームッシュの過去作をぜひ鑑賞してみてください。きっと気に入られるはず!

 

『パターソン』、そしてジャームッシュの世界、人生をちょっとだけ豊かにしてくれる魔法のような作品です。

一人でコーヒー片手に、それかスコッチ片手に楽しんでいただければ間違いなしです。