「好きな映画は?」と聞かれれば必ず「ダンサー・イン・ザ・ダーク」と答える。

他の好きな映画を挙げてみても『The Great Gatsby』(2013)、『PERFECT BLUE』(1997)、『Tim Burton’s Corpse Bride』(2005)、がラインナップ。

温度が低くなるフィルターがかけられている映像が好き。とにかく温度感の低い映画が好みで、それは映像だけではなくストーリーに於いても言えること。

Leonardo DiCaprio in The Great Gatsby (2013)
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『The Great Gatsby』(2013) は、原作をF・スコット・フィッツジェラルドの小説“The Great Gatsby” (1925) としている。

原作が発行されたのは1925年。その第一次世界大戦後の希望の時代、誰もがアメリカンドリームを夢見た1920年代が舞台だ。

禁酒法や株価高騰、悪人の暗躍など、欲望の渦の中で愛に希望を見出し這い上がるトリマルキオ (成り上がり) 、華麗なるギャツビーの人生の物語。

PERFECT BLUE (1997)
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国内でのレイティングはR-15指定、その他ほとんどの国では18禁の『PERFECT BLUE』(1997) 。

監督は、自分の生きた世界を愛し続けて死んだ夢見る男、今敏。

主人公はアイドルグループを突如脱退し、女優への転身した霧越未麻。ストーカーに狙われる未麻の内面が崩壊崩壊していく様を描く。

Johnny Depp, Helena Bonham Carter, and Emily Watson in Corpse Bride (2005)
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『Tim Burton’s Corpse Bride』(2005) では、結婚式のリハーサルで失敗を繰り返しまった新郎ヴィクターが、失意の中、夜の森で式の練習をした際に誤って死体の花嫁エミリーと婚姻関係を結んでしまう。

死者の世界へ連れていかれるヴィクター、本来の新婦であり地上で待つヴィクトリア、そして生前、駆け落ちするはずだった恋人に殺害されたエミリーの運命を辿る。

好きな映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のストーリーは?

Dancer in the Dark (2000)
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過激な表現とドグマ95という映画の方法論で広く知られ、“デンマークの鬼才”と呼ばれる悪名高きラース・フォン・トリアー監督作品『Dancer in the Dark』(2000) のヒロインは様々なジャンルに影響を受けた音楽を生み出す歌手ビョーク演じるセルマ。

様々な愛に支えられながら息子のジーンを女手一つで育てる。

そんな彼女には誰にも言えない悲しい秘密がある。

Björk in Dancer in the Dark (2000)
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それは、病のため視力を失いつつあり、医者から今年中には失明すると宣告されていること。そしてその病が愛するジーンに遺伝していること。

手術を受けなければ自分と同じ運命を辿ってしまうジーンの為に、セルマは工場で懸命に働き、手術費用を稼いでいた。しかし、失明に向かっているためにミスを繰り返したことで工場を解雇され、貯金していたその手術費用までも盗まれてしまう。

ハウツー①:私的なハッピーエンドを押し付けない

Björk in Dancer in the Dark (2000)
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私の一番好きな映画『Dancer in the Dark』(2000) をネットで調べると“鬱映画”なんて評されていることが良くある。

私的には「酷評ばかりしやがって鬱ネット民め… 」と言いたいところだが、確かに『Dancer in the Dark』(2000) のラスト (ネタバレになるので言及は遠慮、上の画像でお察しください) だけを見てハッピーになる人はいない。

起承転結の承と転の部分も、温度は低くトーンは暗い。

Dancer in the Dark (2000)
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半年後に失明すると宣告されているシングルマザーが、職を失い、間もなく貯金を盗まれる。黒い絵の具に黒い絵の具を重ねていくような、底なしの悲運さを目撃する誰もが心を病む。

だから「好きな映画は?」と聞かれて「ダンサー・イン・ザ・ダーク」と答えると「趣味悪いね」と、私は言われる。

Catherine Deneuve and Björk in Dancer in the Dark (2000)
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ただ、セルマの人生が総体的にバッドなわけではないはずだ。あらすじでも話したように、セルマは、様々な愛に支えられながら息子のジーンを育てている。

人に愛され、愛する人がいる人生。

夢を歌う人生を、幸福ではないと言うの?

そして誰でも、どんなモノでもこの世の神羅万象はラスト (終わり) を背負っている。他人から見たその形がどうであれ、本人が望んだ瞬間 (エンド) を迎えることができればそれは紛れもなくハッピーエンドだと思う。

Björk in Dancer in the Dark (2000)
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セルマの視力が回復して、ジーンの病気も治り、ふたりで穏やかな生活を送る。それがこの映画における理想的なハッピーエンドだろうが、そんな到底あり得ない、仰々しくて叶うはずのない雲上の生活をセルマは望んでいない。

そんなハッピーエンドを望んでいるのは楽観主義で幸福主義の鑑賞者だけ。私的なハッピーエンドを押し付けなければ、主人公のハッピーエンドを祝うことが出来る。

因みに『Dancer in the Dark』(2000) は、同監督作品『Breaking the Waves』(1996) と『Idioterne』(1998) に並び、困難な状況下でも純粋な心を保ち続ける女性を主人公にした「黄金の心三部作」のひとつである。

ハウツー②:映像以外も楽しむ

Björk in Dancer in the Dark (2000)
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『Dancer in the Dark』(2000) は、2000年、第53回カンヌ国際映画祭にて最高賞であるパルム・ドールを受賞し、主人公セルマを演じたビョークは映画主演2作目で主演女優賞を獲得した。そして作中の音楽もビョークが担当。

贅沢なことに、主題歌 “I’ve seen it all” (2000) はレディオヘッドのトム・ヨークをフィーチャーしたもの。この曲もゴールデングローブ賞およびアカデミー賞の歌曲部門にノミネートされるなど高く評価された。

ミュージカル映画でもある『Dancer in the Dark』(2000)は、ジャンルを選ばない音楽オタクにとっても最高映画だ。

Björk in Dancer in the Dark (2000)
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環境音にリズムを感じるその感性と、視力のない目でセルマが見た美しき世界。木々とそよ風に踊るヤナギの葉たちや、光ひとつない
暗闇も、小さな閃光の中の光りも。

“I’ve seen it all” (2000) を聴けば、セルマがいかに幸せだったか、楽観主義で幸福主義の鑑賞者にもわかるだろう。

Leonardo DiCaprio and Carey Mulligan in The Great Gatsby (2013)
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因みに、音楽の話をすれば『The Great Gatsby』(2013) のサウンドトラック・アルバムはジェイ・Zが制作総指揮を務めている。

彼のパートナーであるビヨンセがエイミー・ワインハウスの原曲をカバーした“Back to Black” (2013) やラナ・デル・レイの“Young and Beautiful” (2013) 、ファーギーの“A Little Party Never Killed Nobody (All We Got)” (2013) が収録されている。

Akira (1988)
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『PERFECT BLUE』(1997) は、スタッフ、というか今敏の人間関係が面白い。

スペシャルスーパーバイザーとして、SF漫画『AKIRA』(1982) を代表作とする漫画家、大友克洋がクレジットされている。なんと大学在学中に週刊ヤングマガジンの第10回ちばてつや賞 (ヤング部門) 優秀新人賞を受賞していた今敏はその新人時代、大友克洋のアシスタントとして働いていたのだ。

そsて生前、今敏は自身の絵について、大友克洋からの影響が濃厚だと話している。

Johnny Depp in Charlie and the Chocolate Factory (2005)
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『Tim Burton’s Corpse Bride』(2005) は、実は、ティム・バートンにより『チャーリーとチョコレート工場』(2005) と同時進行で制作された。

同時進行で制作を行っていたこともあり、両作共に主演をジョニー・デップが務めた。主人公ヴィクター・ヴァン・ドートの声優を務めた本作は、ジョニー・デップ、声優としてのデビュー作となった。

因みにティム・バートンとジョニー・デップは、友情歴30年の最強コンビである。

ハウツー③:自分の好みを追求する

Anthony Hopkins in Hannibal (2001)
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IMDb (インターネット・ムービー・データベース) は、映画のジャンルを23の基本的ジャンルに分類している。

アクション映画、冒険映画、アニメーション映画、伝記映画、コメディ映画、犯罪映画、ドキュメンタリー映画、ドラマ映画、ファミリー映画、ファンタジー映画、フィルムノワール、歴史映画、ホラー映画、音楽映画、ミュージカル映画、ミステリー映画、ロマンス、SF映画、短編映画、スポーツ、スリラー映画、戦争映画、西部劇である。

Takako Matsu in Kokuhaku (2010)
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私は、幼少期はスズキコージの絵本とスタジオジブリの宮崎駿が監督するアニメーション映画が大好きで、小学生になってからはダレン・シャンと赤川次郎の小説ばかり読んでいた。

中学生になって、父親に『羊たちの沈黙』(1991) やその続編の『Hannibal』(2001) 、そして『告白』(2010) といったスリラー映画や犯罪映画を勧められた。(教育としては如何なものかと思うが、趣味は良すぎる父親)

分かり易い結果として、私の好きな映画のジャンルは、スリラー映画や犯罪映画、ファンタジー映画となった。

Nana Komatsu in Kawaki (2014)
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因みに湊かなえの小説を原作とした『告白』(2010) の主題歌 “Last Flowers” (2009) はレディオヘッドの楽曲だ。

そして大好きな小松菜奈を拝みながら大好きなでんぱ組.incの “でんでんぱっしょん”(2013) を聴けるという最高映画『渇き。』(2013) の監督は『告白』(2010) と同様、中島哲也である。本作には「あなたの理性をぶっ飛ばす劇薬エンタテインメント!!」というぶっ飛んだキャッチコピーが付けられている。

Koji Yakusho and Nana Komatsu in Kawaki (2014))
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例えば、キリスト教の七つの大罪をモチーフにした連続猟奇殺人事件を追う刑事の姿を描く『Seven』(1995) や、同監督デビッド・フィンチャーの作品『GONE GIRL』 (2014) 、バレエ・白鳥の湖の主演に抜擢されて、白鳥と黒鳥の2色を演じることになったバレリーナがプレッシャーにより徐々に精神を崩壊させていく様を描いた『Black Swan』(2010) などもお気に入りだ。

この手のあからさまなスリラー映画や犯罪映画は何でも観たし、当然これからも観る。

Pierce Brosnan, Jack Nicholson, Glenn Close, Danny DeVito, and Annette Bening in Mars Attacks! (1996)
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ファンタジー映画なら圧倒的にティム・バートンの作品が好きで 『Mars Attacks!』(1996) も父親に勧められて観た。

父親は「キャスティングが凄い」という理由で私にこれを勧めてきた。

確かに、豪華なキャスティングだった。デイル大統領とアート・ランドという二役を演じたジャック・ニコルソンは「どの役をやりたい?」というティム・バートンの質問に「全部」と答えるほど乗り気だったそうだ。

Tim Burton in Mars Attacks! (1996)
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公開当初アメリカでは「C級映画以下」と酷評されていた『Mars Attacks!』(1996) だが、これは私が見ても間違いなく、C級映画以下のクソ映画。父親も同じように思っているらしい。

しかしながら、私にとってはティム・バートンの世界観が漂う大好きな映画のひとつである。DVDを購入するほどだ。

私は、ファンタジー映画というより “ティム・バートン” をひとつのジャンルとして好きなのかもしれない。

娯楽として興じる映画

Lars von Trier at an event for Melancholia (2011)
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映画の公開イベントでこのタトゥーをカメラに向ける、このイカレた男こそ『Dancer in the Dark』(2000) の監督ラース・フォン・トリアーである。

ラース・フォン・トリアーは、2011年、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出された 『Melancholia』(2011) の上映後の記者会見で「ヒトラーの気持ちは理解できる」などと親ナチを思わせる発言をし、カンヌから追放処分を受けた。

上の写真も、その映画の公開イベントで撮影されたものだ。

The House That Jack Built (2018)
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そして、映画『The House That Jack Built』(2018) で、ラース・フォン・トリアーは7年ぶりのカンヌ復帰を果たす。

ところが、公式上映では想像をはるかに超えた過激で悪趣味な仕上がり故に途中退出者が続出した。一方、上映終了後の会場では盛大なスタンディングオベーションが沸き起こる。賛否が両極した作品だった。

ラース・フォン・トリアーは「心理的な“挑発”は健全なことである」と話す。鑑賞者が、その“挑発”が何を表すのかについて考えるからだそうだ。

Matt Dillon and Bruno Ganz in The House That Jack Built (2018)
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そして「観客が不快感から劇場を去ったとしたら、それはポジティブな体験ではないが、それでも彼らはそれについて考える。そして翌日、もう少し考えた後、それを受け入れ始めます。たとえ100人が去っても、そして最初は嫌いでも、多くの人に考える機会を与えるので、それは私にとっては良いことなんだ」と話していた。

この男は鑑賞者を不快にさせること (楽しませること) を目的として映画を製作しているが、彼にとってはその不快感こそがエンタテインメントの真骨頂なのである。

これは「ハウツー①:私的なハッピーエンドを押し付けない」ことと通ずるものがある。

10年前の「ヒトラーの気持ちは理解できる」という発言についても、彼は「冗談のつもりだった」と話していた。こいつは骨の髄まで究極の悪人 (善人) なのだ。

Lars von Trier in Dancer in the Dark (2000)
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映画を作る人間の、作品制作の広義の目的は、全てエンタテイメント (人々を楽しませる娯楽) を生み出すことだろう。

そして鑑賞者が製作者に贈ることのできる最大の還元は「楽しむこと」だと信じている。

だから隅から隅まで、出会った映画の全てを楽しもう!

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