美術館に行きたーーーーーーーーーーーーーーーい!
もう限界!
無差別美術館オタクの私にとっては、美術館閉鎖やら休館やら外出自粛やら、その全てがもう我慢の限界。
部屋の中を行ったり来たりぐるぐる、今まで出先のアートに費やしてきたこのエネルギーをどうしたら解消できるか、と考えました。
そして辿り着いたのが「アート映画鑑賞」。

Midnight in Paris (2011)
IMDb
そもそも映画とは究極のエンタメでありアート。
多くの人間が携わり、細工が施された1秒間、いや0コンマ1秒間を大量に繋ぎ合わせた時間のコラージュ。洗練された時間を紡いだ時間軸上の大規模アート。
その「映画」の主題が「アート」になっているなんて、これはアートに飢えた私をお腹いっぱいにしてくれるだろうと思ったわけです。
今回は、私が観たアート映画やドキュメンタリー作品まで、アートに纏わるおすすめ作品を、映画のレビューや概要、アート作品情報に言及しながら紹介していきます。
今の気分や目的に合わせてご覧ください!
人の温かみを感じたいならこのアート映画がおすすめ
『真珠の耳飾りの少女』(2004)
この作品は、展開される空間から、音楽まで、映画で体感できる感覚の全てに対して優しいんです。
画家ヨハネス・フェルメールの屋敷で家政婦として働く主人公グリートが、フェルメールの最も有名な絵画『真珠の耳飾りの少女』(1665)のモデルになった契機を綴った、フィクションのアート映画。
光に照らされ透き通った情景が全編を通して映し出され、どこを切り取ってもフェルメールの絵画のような美しさを帯びた優艶な作品になっています。
スカーレット・ヨハンソン演じる主人公グリートの白く透き通った肌、あどけなさと美貌、フェルメール絵画のように淡い光の粒と濃い影、情景を一層暖める音楽などにも注目です。
因みに、フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』の実際のモデルの詳細は現在も明らかになっていないんですよ。
『黄金のアデーレ 名画の帰還』(2015)
人間臭さ全開だけど超美しい矛盾映画がこれ。
このアート映画のモデルとなったのは20世紀、法曹界の記憶に残るニュースのひとつとなった事件。
アメリカに暮らす82歳のマリア・アルトマンは、伯母の肖像画であるグスタフ・クリムトの作品『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ』(1907)の所有権を正当な持ち主である自分に返還させるべく当時この作品を所有していたオーストリア政府を訴えます。
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本作はこの一連の騒動の実話をもとにしたヒューマンドラマ系のアート映画であり、ストーリーの中枢であるマリアの『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ』(1907)への思いだけでなく、ナチス・ドイツやオーストリアの法的歴史も知ることができます。
インスピレーションを求めるあなたにはこのアート映画・ドキュメンタリーがベスト
『DOWNTOWN81』(2000)
画家、グラフィティ・アーティスト、ミュージシャンなど、多くの肩書を持ち、27歳という若さでこの世を去った、みんな大好きジャン=ミシェル・バスキア主演のアート映画です。
バスキアがモデルとなっている映画はたくさんありますが、彼が主演の映画はこの作品のみ。
脈を打ち、息をするバスキアに大興奮。かっけー。
「ポップ・アートの旗手」として有名なアンディ・ウォーホルに見出され、「クイーン・オブ・ポップ」と称されるマドンナと付き合い、時代の寵児としてスターダムに押し上げられる直前のバスキア。
そんなバスキア本人のダギング(スプレーペンキでの落書き)をする姿を収めた幻の映像をはじめ、80年代初期のニューヨーク・ダウンタウンの空気感、実在のミュージシャンたちのライブ映像などを奇跡的に切り取った貴重な映像が満載です。
『ミステリアス ピカソ -天才の秘密』(1956)
これは「無限ピカソ」としか言いようがない。
『ミステリアス ピカソ -天才の秘密』(1956)は、アンリ・ジョルジュ・クルーゾ監督による、画家・パブロピカソのドキュメンタリー映画です。
本作の撮影のためにピカソは新作をいくつも制作しています。そのほとんどの絵画はその後破棄されてしまっているため、それら作品はなんとこの映画でしか見られません。
ピカソがマーカーでのラフなドローイングから油絵まで幅広く、ピカソの作品制作の風景がこの映画には収められています。
幾重にも重ねられる色やモチーフ、一筋縄では理解できないピカソの直感から放たれるアーティスティックな言葉を、画面いっぱいに描かれる絵画から感じられるアート映画になっています。
憂鬱な気分から抜け出したいあなたに見てほしいアート映画
『モネ・ゲーム』(2012)
はい、これまじでだいすき。これはまじでお気に入りです。
大興奮しながら話したいところですが、ここはキリリとライターらしく紹介していきます。
・・・
キュレーターである主人公ハリー・ディーン(コリン・ファース)は上司であるライオネル・シャバンダー(アラン・リックマン)の横暴さに辟易していました。
ディーンは、印象派絵画のコレクターであるシャバンダーを騙し、大金を巻き上げる計画を立てます。
その計画は、シャバンダーが探し求めているクロード・モネの『積みわら 夕暮れ』の贋作をあたかも本物のように仕立てシャバンダーに売りつけるというものでした。
『積みわら 夕暮れ』と接点のあるカウガールのPJ・プズナウスキー(キャメロン・ディアス)を仲間に迎え入れたディーンは果たしてシャバンダーをうまく欺き、怨恨を晴らすことが出来るのでしょうか。

この作品に登場する『積みわら 夕暮れ』の贋作は実際のクロード・モネの積みわらシリーズ『積みわら 夏の終わり』(1890)がモデルになっていると考えられます。
モネの『積みわら』の解説はもちろん、豪華なキャストたちが演じる個性的な登場人物たち、ハラハラドキドキの詐欺計画から目が離せなくなること間違いなしのエンタテイメント系アート映画です。
まじだいすき。絶対に観て。
『ミッドナイト・イン・パリ』(2011)
好きな芸術家登場しまくりで感極まる大号泣映画。
小説家志望の主人公ギル・ペンダーは婚約者のイネスとその両親とともにパリを訪れます。
ある夜ギルは、ひょんなことをきっかけに、自分が旅しているのが1920年代のパリであることに気付きます。
ギルは1920年代のパリにて、キュビズム画家のピカソとその愛人であるアドリアナに出会い、婚約者のイネスがいながらもアドリアナに一目惚れしてしまいます。
・・・
この映画にはピカソだけでなく、シュルレアリストのサルバドール・ダリやマン・レイ、フォーヴィスムのアンリ・マティスなど多くの芸術家が登場し、主人公ギルの運命に携わることになります。
そしてなんとウディ・アレンが監督と脚本を務めたこの映画、第84回アカデミー賞で脚本賞を受賞しているんです。
芸術家たち各々のアイデンティティを細かく描写し、観る者をも1920年代に誘い込むようなパリの美しい街並みについ陶酔してしまうラブ・コメディ系アート映画『ミッドナイト・イン・パリ』(2011)で心躍る夜を過ごしてみてはいかがでしょうか。
『ビッグ・アイズ』(2014)
ティム・バートンオタクとして、これを紹介しないわけにはいかない。
ということで
ハリウッド界の「鬼才」という異名を持つティム・バートン監督の作品『ビッグ・アイズ』(2014)は実在の画家マーガレット・キーンと、その夫であったウォルター・キーンの伝記系アート映画になっています。あのダーク・ファンタジー男が監督したこの映画、まさかの実話。
ウォルター・キーンはその豊かな社交性とマーケティング能力で、大きな瞳を持つ子供の特異な絵を描く画家として著名になります。
しかし実は!その絵は妻であるマーガレット・キーンが描いており、ウォルターはマーガレットの作品に署名しているだけでした。
この映画『ビッグ・アイズ』は、目の大きな子供の絵の事実を公表しようと決意したマーガレットとウォルターの運命を辿るアート映画です。
エキセントリックなマーガレットの作品は、現代アート界でも著名なんですよ。
ティム・バートンのダーク・ファンタジーな世界観や、マーガレット・キーンのエキセントリックな作品たち、実話とは思えないストーリーなどの要素が重なり、見ごたえのあるアート映画です。
もっと詳しく芸術の世界を追いたいならこの芸術映画
『ゴッホ~最期の手紙~』(2017)
ゴッホも凄いし、キャスト全員凄い。
ゴッホの死の真相を再構築する、映画史上初の全編絵画のアニメーション・アート映画。
このアート映画は125人の油絵画家によって描かれた62,450枚の油絵からなる96分間に、ゴッホの風景画や肖像画など計130枚の絵画作品が再現されています。
ゴッホはテオに贈った最期の手紙で「我々は自分たちの絵にしか語らせることはできない」と綴っています。この映画では、まさに絵が語るんですね。
絵画作品の再現度の高さ、一度は目にしたことのあるゴッホの名画たちが、生命を吹き込まれて動き出すその光景がゴッホの人生を鮮明に語り、鑑賞者をアートの世界に誘い込みます。
とにかく映像が、というか画像がきれいなのはもちろんこの映画の見どころですが、一番の推しポイントはなんといっても日本語吹き替えに山田孝之が参加していること。山田孝之に耳を撫でられたい衝動に駆られ、字幕版の後に吹き替え版もしっかり見ました。
『ナチスの愛したフェルメール』(2016)
贋作もええやん、ええやん、ってなる映画。(贋作を売るのは犯罪です。贋作ダメ、ゼッタイ)
本作は、『真珠の耳飾りの少女』(1665)で著名なヨハネス・フェルメールの贋作を、ナチス国家元帥ゲーリングに売った罪で1945年5月29日に逮捕、起訴された天才贋作画家ハン・ファン・メーヘレンの半生を描いた伝記映画です。
メーヘレンは、20世紀で最も独創的で巧妙な贋作者の1人であると言われており、代表作『エマオの食事』(1936)は現在もボイスマン美術館に収蔵されています。
フェルメール作品の熱心な研究や贋作を制作するに至った契機、キュビズム画家・ピカソへの嫌悪、自身の恋愛のエピソードなど、絵画に関してだけでなくハン・ファン・メーレンの人生を目の当たりにできるアート映画作品となっています。
何かに夢中になりたいあなたにオススメ
『鑑定士と顔のない依頼人』(2013)
鑑賞後、ショックで撃沈映画。
2013年に公開された、イタリアのラブロマンスおよびミステリーにカテゴライズされているアート映画です。
ある日、美術鑑定士である主人公ヴァージル・オールドマンのもとに、自宅に収蔵している両親が遺した美術品を競売にかけて欲しいという依頼が電話を通じて入ります。
ヴァージルは依頼人の自宅に赴きそこには数多くの美術品がありますが、依頼人クレア・イベットソンは隠し部屋に引きこもっており、決して姿を現しません。
壁や電話越しにクレアと話しているうちに、ヴァージルはクレアの容姿に興味を持ち、夢中になっていってしまいます。
・・・
本作中で競売にかけられる芸術作品の数々は、時代やジャンルが幅広く色取り取りです。
このアート映画で使用された美術品はヴァージルの部屋に登場するものが1割、その他シーンでは7割が本物だそうですが、どれが本物で偽物か、その詳細は明らかではありません。
主人公ヴァージルの部屋も登場し、過剰なほどに白い壁が女性の肖像画で埋め尽くされたヴァージルの部屋は、部屋自体が芸術作品とも感じられるような、ヴァージルの醜い執念と、煌びやかな女性たちが混在した、非常に美しい光景になっています。
『モンパルナスの灯』(1958)
不器用ながらに生きるモディリアーニ、かわいい。
監督、脚本を担当したジャックベッケルの代表作となった、画家アメデオ・モディリアーニの伝記映画。
1917年のモンパルナスを舞台に、結核に侵されながらも情熱的な創作活動をつづけたモディリアーニと恋に落ちたジャンヌとの苦悩の慈悲の生涯を描いたアート映画です。
生前、画家として評価されず、酒や薬物に溺れ、病に侵され35歳で夭折するという悲劇の連続の人生を過ごしたモディリアーニが、悲劇と対峙しながらも純粋に恋をし、絵を描き続ける姿をジェラール・フィリップが演じます。
『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)
アート映画かつサスペンス映画の真骨頂『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)。
ルーヴル美術館の館内で射殺され、レオナルド・ダ・ヴィンチの『ウィトルウィウス的人体図』(1487)のポーズで横たわる館長ジャック・ソニエールと残された謎の暗号。
館長ソニエールの「ロバート・ラングドンを探し出せ」というダイイング・メッセージにより容疑者となってしまった主人公ロバート・ラングドンが、館長の孫娘であり暗号解読者のソフィー・ヌヴーと共にソニエールが床に残した暗号の謎を解き明かす、というミステリー・アート映画です。
この映画の撮影はフランス・パリのルーヴル美術館で実際に行われていますが、ルーヴル美術館での映画の撮影が許可されたのはこの『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)が初!
ルーヴル美術館に収蔵されているレオナルドの代表作『モナ・リザ』(1503)も登場していますが直接証明を当てることに許可が下りず、本作に登場する『モナ・リザ』は複製を使用しているとか。

暗号の謎を紐解く鍵となる『最後の晩餐』(1498)については、作品に描かれているイエス・キリストと12人の使徒についての考察などがなされており、もちろんストーリー性のあるミステリーとしても鑑賞することができますし、絵画を考察していくドキュメンタリー的な観点からも鑑賞できるアート映画です。
美術館難民よ、どれ観て救われちゃう?

Gambit (2012)
IMDb
私含め、アートに飢えてる皆様のため、スピーディーにお届けしました。
ランチに行く感覚で、美術館に気軽に行けない日々が続いていることは残念ですが、こんな今だからこそ心置きなく美術館に行くことができる日を楽しみに、アート映画やドキュメンタリー映画で芸術を摂取しましょう。
気になる作品やおすすめ作品がある方は是非教えてください!
レッツ・アート映画!