2021年は専らSFばかりを見ていた私ですがそれは個人的な問題ではないと思っています。

2020年から流行が続くコロナウイルスの蔓延や米国で多くの犠牲者を出したハリケーン「アイダ」などを始めとする気候変動、億万長者による飛行ビジネスと宇宙観光。

2021年そのものがSFの時代であったと言っても過言ではないのではないでしょうか。

今回は、そんなSFの時代を生きた私の「2021年公開ベストムービーTOP3」を遅ればせながご紹介します。

マトリックス レザレクションズ


『マトリックス』シリーズ最新作、第4作目となる言わずと知れたベストムービー「マトリックス レザレクションズ」です。

1999年に映画「マトリックス」が公開された最高のサイバーパンク映画最新作の主人公は、夢と現実の境界が曖昧になる幻覚症状や度々生じる既視感に悩まされるゲームクリエイターのトーマス・A・アンダーソン。

サンフランシスコの精神科医から、精神を安定させるための青いピルを大量に処方してもらっています。

The Matrix Resurrections (2021)
The Matrix Resurrections (2021)


「主人公、ネオじゃないの?」と思う人の為に説明しておくと、本作「マトリックス レザレクションズ」はオリジナル3部作の最終章「マトリックス レボリューションズ」から約60年後の世界が舞台となっており、ネオは救世主として過ごした日々を忘れてマトリックスで生活しています。

トーマスは、マトリックスに組み込まれたネオであり、ウォシャウスキー監督の3部作に似たゲーム「マトリックス」のエンジニアとして登場しているんです。

トリロジーを観て、あの壮大で革命的なVFXやアクションの虜になっていた人は「マトリックス レザレクションズ」の映像に物足りなさを感じてしまうかも知れないです。本作では“マトリックス”への没入感をトリロジー程には感じることができず、作品として観てしまった人も少なくないのではないでしょうか。

「マトリックスへ行きたかったのに」と思ってしまった方もいるでしょう。私もそう!

The Matrix Resurrections (2021)
The Matrix Resurrections (2021)


そんな風に感じてしまった方やこれから観る方に注目してほしいのが音楽。

本作「マトリックス レザレクションズ」の音楽を手掛けたのはジョニー・クリメックとトム・タイクワー。共にマトリックスと親和性が高い人物です。

オーストラリアの音楽家のジョニー・クリメックは、『マトリックス』シリーズの監督であるウォシャウスキー姉妹が手掛けたドラマ「センス8」でも音楽を手掛けています。

トム・タイクワーは『マトリックス』シリーズの3作目「マトリックス レボリューションズ」でドン・デイヴィスと共に音楽を手掛けた人物で、ジョニー・クリメックとトム・タイクワーはウォシャウスキー監督映画「クラウド アトラス」の音楽も共同で作成しているんです。

The Matrix Resurrections (2021)
The Matrix Resurrections (2021)


リブートでは、モーフィアスが赤いピルと青いピルを差し出すシーンがあるのですが、トーマスは今まで飲んでいた青いピルではなく、ネオとして赤いピルを服用し、荒廃した現実世界へとリターン。

精神を安定させるために大量に薬を飲んでいるあなた。便利で美しいこの世界を本物だと思っているあなた。

現実世界へ帰還できるのは今しかないのかもしれませんよ。

DUNE/デューン 砂の惑星


鬼才アレハンドロ・ホドロフスキーまでも魅了したフランク・ハーバートのSF大河小説『デューン砂の惑星』を原作とした「DUNE/デューン 砂の惑星」。

まずキャストが眼福過ぎて観に行きました。

未来が見える能力を持ち、全宇宙から命を狙われる主人公のポール・アトレイデスは第90回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたティモシー・シャラメ、ヒロインのチャニは映画『スパイダーマン』シリーズのミシェル・ジョーンズ役で知られるゼンデイヤです。

Timothée Chalamet and Zendaya in Dune: Part One (2021)
Timothée Chalamet and Zendaya in Dune: Part One (2021)


ポールがチャニに恋をするのですが、そのほとんどがポールの幻想の中。かなりソーシャルディスタンスなラブロマンスです。

監督は、SF映画の金字塔である「ブレードランナー」35年ぶりの続編「ブレードランナー 2049」の監督を務めたドゥニ・ヴィルヌーヴ。

視覚効果に頼らないことを目指し、自然な光や影、砂、そして地球を映像に納めた「DUNE/デューン 砂の惑星」は、第94回アカデミー賞の“視覚効果賞”のショートリストで候補になっています。

因みに上記で紹介した「マトリックス レザレクションズ」も視覚効果賞のショートリストで候補になっているんですよ。

そして音楽は「ブレードランナー 2049」でも音楽を手掛けたハンス・ジマー!

当時、クリストファー・ノーランから「TENET テネット」への参加を依頼されていたジマーでしたが、原作である『デューン砂の惑星』を愛好していたことから「DUNE/デューン 砂の惑星」へ参加したと言われています。

Dune: Part One (2021)
Dune: Part One (2021)


アカデミー賞“視覚効果賞”の候補となっていることもさることながら、本作は最高峰の映像美を誇る作品で「劇場で映像体験できて本当に幸せだったなあ」と個人的には感じています。

4DXで鑑賞したのですが、砂漠に舞う細かい砂と強い風、眩しすぎる光と広大な砂地に生息する巨大生物であるサンドワームの接近など、デューン砂の惑星を体感しました。

また、サウンドについても最高峰。

サウンドエンジニアのマーク・マンジーニとテオ・グリーンは、カリフォルニアのデスバレーで砂が動く音をハイドロフォンで録音し、それを自然の音を劇中の音として加工するFDR (フェイク・ドキュメンタリー・リアリズム) を用いて応用。サンドウォームが近づいてくる音を作成しているそうです。

フリー・ガイ


自分がビデオゲームのモブキャラだったことに気付いた主人公ガイ演じるライアン・レイノルズによって「現代版 バック・トゥ・ザ・フューチャー」と称された「フリー・ガイ」!

運命の相手である“理想の女性”と出会うことを目的としてプログラミングされたモブキャラのガイは、ある日その理想の女性に出会います。

彼女はモロトフ・ガールと名乗るのですが、このモロトフ・ガール、実はモブキャラではなくミリー・ラスクという現実世界のプレイヤー。

ビデオゲームのプログラムの一部に過ぎす、モブキャラのはずだったガイはモロトフ・ガールに一目惚れしたことで好き勝手に行動し始めるんです。

いわば自己を持った人工知能へと進化していきます。

Ryan Reynolds and Jodie Comer in Free Guy (2021)
Ryan Reynolds and Jodie Comer in Free Guy (2021)


この映画史上最高のシーン(※個人的な感想です)は、ガイがモロトフ・ガールに「君にキスしたいんだ。それっておかしなことかな?」と言うシーン。

君にキスしたいんだ。それっておかしなことかな?

はい。それっておかしいことです。

だってプログラムのモブキャラとプレイヤーのキャラがキス?しかもビデオゲームにはそんなコマンド存在しません。

これも「DUNE/デューン 砂の惑星」と同じくかなりソーシャルディスタンスなラブロマンスだなと思いました。

デジタルが発達しすぎた現代以降にこの世界を知る人たちは、もしかしたらAIとのキスがファーストキスになったりするのかも。

Ryan Reynolds and Jodie Comer in Free Guy (2021)
Ryan Reynolds and Jodie Comer in Free Guy (2021)


「マトリックス レザレクションズ」の主人公トーマス・A・アンダーソンは仮想空間に暮らす現実世界の人間で、「フリー・ガイ」のガイは仮想空間で生活しながら自分を現実世界の人間だと思って疑わない仮想空間の人物。

今回紹介した3作はどれもこれも仮想と現実の境界、そして対人の距離感が歪んだ奇妙な作品でした。

デジタル世界がありとあらゆるところに展開されている2021年、そしてより拡大していくであろう2022年。

自分の居場所や大切なものをしっかり見極めるべきなのかもしれませんね。

+2