「万引き家族」の是枝裕和監督が、「パラサイト 半地下の家族」の名優ソン・ガンホを主演に初めて手がけた韓国映画。子どもを育てられない人が匿名で赤ちゃんを置いていく「赤ちゃんポスト(ベイビー・ボックス)」を介して出会った人々が織り成す物語を、オリジナル脚本で描く。古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョンと、赤ちゃんポストのある施設で働く児童養護施設出身のドンスには、「ベイビー・ブローカー」という裏稼業があった。ある土砂降りの雨の晩、2人は若い女ソヨンが赤ちゃんポストに預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づいて警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく赤ちゃんを連れ出したことを白状する。「赤ちゃんを育ててくれる家族を見つけようとしていた」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。一方、サンヒョンとドンスを検挙するため尾行を続けていた刑事のスジンとイは、決定的な証拠をつかもうと彼らの後を追うが……。ソン・ガンホのほか、「義兄弟 SECRET REUNION」でもソンと共演したカン・ドンウォン、2009年に是枝監督の「空気人形」に主演したペ・ドゥナら韓国の実力派キャストが集結。2022年・第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、主演のソン・ガンホが韓国人俳優初の男優賞を受賞。また、人間の内面を豊かに描いた作品に贈られるエキュメニカル審査員賞も受賞した。(映画.comより

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赤ちゃんポスト

世界で初めての赤ちゃんポストは2000年4月にドイツ・ハンブルクの民間幼稚園の片隅に「Babyklappe(ベビークラッペ=赤ちゃんの扉)」の名前で設置されたそうです。ドイツでは数年の間に100箇所ほどの赤ちゃんポストが設置され、現在もそれぞれの赤ちゃんポストに毎年0名〜数名の赤ちゃんが預け入れられています。

日本では、2007年5月に熊本県の慈恵病院に医師の蓮田太二により赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」が設置され、開設初日に3歳男児が預けられ、大きな話題になりました。2007年5月から2020年度までに累計157人の子どもが預けられていて、2017年3月までの間に預け入れられた130人のうち、13人が生涯をもち、26人の親の身元が不明だったことが明らかになっているそうです。また、2022年1月には国内初の内密出産を同病院において実施しています。

一方韓国の赤ちゃんポストは2009年にイ・ジョンラク牧師とその妻チュンジャによりソウル市内のジュサラン・共同体教会に設置。現在、韓国には3つの赤ちゃんポストがあり2009年から2019年末の間に1802人の赤ちゃんが預けられています。

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是枝裕和監督の最新作「ベイビー・ブローカー」

是枝監督が描く作品に“家族”というテーマは必要不可欠で、ネグレクトを描いた「誰も知らない」、新生児取り違えを題材にした「そして、父になる」、嘘の家族を描いた「万引き家族」、フランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュを迎え、役の上でも大女優とその娘の隠された秘密をめぐる親子の話を描いた「真実」など。

そして今作で是枝監督が描くのは、ほんの少しの間“里親探し”を一緒にするはめになった疑似家族。今回のメンバーは家族として生活はしていません。赤ちゃんを置き去りにした若い女性ソヨン、借金に追われるクリーニング店の店主サンヒョン、赤ちゃんポストがある施設で働くドンスは、ソヨンの赤ちゃんの里親探しを続ける旅を通して家族になっていきます。

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一緒にいる時間を長く重ねて寝食を共にし、心を通わせた時に血の繋がりとは別の家族というカタチがうまれるのかなと思いました。それと同時に、赤ちゃんポストの意味と“赤ちゃんをポストに預ける背景”、そして預けられた子ども達が感じていることを映画を通して考えさせられました。

是枝監督は、この『ベイビー・ブローカー』の準備をしている日々で話を聞くことができた子ども達(親が何らかの理由で育児放棄し施設で育った子ども達)が、“果たして自分は生まれてきてよかったのか?という問いに対して答えを持つことができなかった”ということを知って言葉を失ったそうです。

生まれなければよかった命なんてあるはずがない。でも実際に親から捨てられた子ども達には“捨てられた事実”がつきまとう。生きることとその意味を「ベイビー・ブローカー」という映画を通じて考えさせられます。

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個人的には赤ちゃんポストが世界中にあることや、初めての赤ちゃんポストはたった20年前にできたこと、日本と韓国の預けられた子どもの数の差や社会情勢などを、今更ですけどこの映画をきっかけに知って、女性としていろいろと考えさせられました。こんなことを書くとどんな重い映画なんだと思われるかもしれませんが、こんなに重いテーマなのに、主人公サンヒョンを演じるソン・ガンホの憎めないキャラとユーモアに助けられて、彼らの旅を眺めながらこんな家族があったらそれはそれでいいのになぁと思っている自分がいました。

是枝監督は、いつもいわゆる“普通じゃない家族”を描いているのに、彼の映画は“普通じゃない家族のほうがよっぽど家族らしい”と観ているうちに思わせられるので不思議です。結婚というカタチではない、家族というか仲間の作り方があってもいいのになぁと思ったりもしてしまいます。

彼らを検挙するためにずっと尾行している刑事スジン(ペ・ドゥナ)の存在も、ストーリーが進むにつれ少しずつ存在感が大きくなり、旅はいつか終わるものですが、旅の終わりとその後のラストシーンはなんだかとても優しい終わり方だなぁと、いろいろと考えさせられたにも関わらず静かに落ち着いてエンドロールを迎えられたような気がします。

是枝裕和監督の最新作で初の韓国映画、「ベイビー・ブローカー」は6月24日(金)より公開です。

■監督・脚本・編集:是枝裕和
■出演:ソン・ガンホ カン・ドンウォン ペ・ドゥナ イ・ジウン イ・ジュヨン
■製作:CJ ENM ■制作:ZIP CINEMA ■制作協力:分福
■提供:ギャガ、フジテレビジョン、AOI Pro. ■配給:ギャガ

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