日本の映画雑誌で最も古い「キネマ旬報」という雑誌がありまして、その雑誌が年に一度発表している「キネマ旬報ベストテン」は恐らく日本の映画賞の中で最も権威のある賞だとも言われています。

一方、「映画藝術」という雑誌はもっと芸術性が高くお堅い雑誌でして、これがキネマ旬報とは水と油と言いますか、キネマ旬報でナンバーワンの作品を平気でワーストワンなんて評することがあるのです。それに加え「映画秘宝」というオタクや怪獣・SFファン寄りのコアな映画雑誌もあって、こちらもキネマ旬報とは方向性が全く違うのですが、三者三様その層のファンには人気の雑誌です。

さてさて、何故映画雑誌の話をタラタラと話したかと言いますと、実は昨年2016年にその3誌から発表された年間ベストテンにおいて、キネマ旬報第1位、映画藝術第1位、映画秘宝第2位(ちなみに1位はシン・ゴジラ)という前代未聞の高評価を受けた作品があって、それが今回紹介する『この世界の片隅に』なのです。

 

 

(C)こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会

 

 

いったいそれってどんな映画なの? 気になりますよね。

戦争映画です。んでもってアニメです。

うわぁ重っ!戦争映画でアニメといえば『火垂るの墓』でしょ、せっかくの週末に観るタイプの映画ではないですよ。ズドーンってなりますもん。

でもね、この作品はとてもほのぼのとしているんです。絵のタッチも色鉛筆で描いたような優しいタッチで、主人公の声を務めるのが “のんさん” でして、どこか気の抜けた声が天然ボケの主人公ととってもマッチしています。

 

 

(C)こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会

 

 

映画はこうの史代の同名漫画(これも必見!)を原作とする長編アニメーションで、太平洋戦争下の広島で18歳の若さで嫁いだ主人公すずが、戦時下の困難の中にあっても工夫を凝らして豊かに生きていく姿を描く感動作。

この映画を語り出したら止まらなくなるのですが、やはり特筆すべきなのはその時代考証の凄さです。

70年前の広島の天気から、実在した店の品揃え、空手警報の発令時刻に至るまで徹底的に調べ上げたそうです。とにかくリアリティにこだわることで、当時の戦争下でたくましく生き抜いたごくごく普通の女の子のごくごく普通の毎日を描ききれたのだと思います。

 

 

(C)こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会

 

 

この映画を製作する過程で資金難は大きな障壁となりました。泣く泣くすがったのは、クラウドファンディングと呼ばれるファンからの資金投資でした。その額は4000万円近くに及び着想から6年の月日を重ねようやく本作は完成しました。そして、小規模公開作品としては興行収入25億円を超える大ヒット、なんと公開から一年も経った現在(2017年12月28日現在)もロングラン公開されているという異例の事態を招きました。

『この世界の片隅』には多くの人の熱い想いがこもっています。できるだけ多くの人に観て欲しい、そんな気持ちを抱いている、私もファンの一人です。ぜひご覧になってみてください!