涼しくなってきましたね。夜になれば風が心地良いですし。
ちょっと派手なお化粧して、可愛いお洋服を纏って「夜遊びしたいな?羽伸ばしちゃいたいな~」と毎晩思うのですが、なんとなく気が引ける。1年前は、終電で誰かに会いに行くなんてこと、良くあったのに。私たちは今、人類史に残る「不思議な時代」を経験していると思います。
独り家で過ごす時間が増えた私が、今まで以上に何に時間を費やしているかというと「カルチャー」だと思います。
私はもともと、美術やファッション、音楽や文芸、映画やアニメなどといったカルチャー総体・芸術全般が大好きです。私のそのオタクっぷりは今、間違いなく加速しています。Instagramでアパレルブランドの最新コレクションをチェックして、youtubeでショーを見る。Twitterで大好きなRockやHipHopミュージックのニュースを知る。Kindleで美術雑誌を読んで、アーティストや展覧会情報が気になればGoogleで検索。夜はコーヒーを淹れて、Netflixを開く。今晩は何観ようかな。チャーリー・カウフマン監督のNetflixオリジナル映画「I’m Thinking of Ending Things(もう終わりにしよう。)」面白いらしいね。Twitterで話題になってた。これ観ようかな。
こう見ると、「カルチャー」に時間を費やしているようで、実はインターネットという「仮想空間」に足を運び、歩き回っているだけなのかもしれません。「仮想空間」は膨張し続け、その膨張は止まる事を知らず、「生活」の場である時間も空間もどんどん浸食していきます。今まさにこの世は「デジタルワールド」と化しているのです。
そんなデジタルワールドを生存圏とするカルチャー達は、この先どのような進化を遂げていくのでしょう。今回は「ファッション」に的を絞って、その未来を考えていきたいと思います。
「SNS=マッチングアプリ」Z世代とファッションの出会い方
まず、Z世代とは、1996年から2015年の間に誕生した世代です。2020年に5歳から24歳を迎え、世界の人口の4分の1を占める若年層のことを指します。高速インターネット、スマホ、ビデオ・オン・デマンド、SNSが当たり前のように存在しているデジタルワールドで育った生粋の「デジタルネイティブ世代」です。
株式会社テスティーは、そういった若年層をターゲットに調査した結果を発信する「TesTee Lab」において、10〜20代男女1,808名(10代男性428名、10代女性419名、20代男性481名、20代女性480名)を対象に「ファッションに関する調査」を実施しました。
「ファッションに関する情報収集方法」を調査した結果、各性年代において「SNS」が最も多く、10代男性で49.8%、10代女性で76.4%、20代男性で40.7%、20代女性で69.2%となりました。「SNSを利用してファッション情報を収集している」と回答した人を対象に、「ファッション情報を収集する際に利用するSNS」を尋ねたところ、全性年代において「Twitter」、「Instagram」、「LINE」が挙がりました。男性では「Twitter」利用者が最も多く約6割、女性では「Instagram」利用者が最も多く約8割という結果でした。(「TesTee(テスティー)調べ:https://www.testee.co」)
さすがデジタルネイティブ、SNSを駆使してファッションの情報収集をしています。「SNSで可愛い服を見つけて購入している」なんて子が多くいるのではないでしょうか。私もそのうちの1人です。しかも、体型・セクシャルなどといった個性が異なる人たち、いろんな人の着画が見れてめちゃくちゃ参考になる。
いわばSNSは、Z世代とファッションの出会いを促進する「マッチングアプリ」のようなもの。
ファッションブランドもそれを見越し、SNSを用いて情報提供を行っています。では、ファッションブランド「そのもの」は物理的・空間的に見た時どのような姿をしているのでしょう。
世界中、何処でも何時でも誰でも足を運べる眼鏡屋

米メディアFast Companyが発表している「世界で最もイノベーティブな50社(THE WORLD’S 50 MOST INNOVATIVE COMPANIES)」というランキングがあります。2015年、AppleやGoogleを抑えて、1位の座に君臨したのは「Warby Parker (ワービーパーカー) 」というアイウェアブランドでした。
「イノベーティブ(INNOVATIVE)」は「革新的」という意味です。では、「世界で最も革新的なブランド」と評されたWarby Parkerは、何がどう革新的だったのか。Fast CompanyはWarby Parkerについて次のように評しました。

FOR BUILDING THE FIRST GREAT MADE-ON-THE-INTERNET BRAND
インターネットから生まれた最も優秀で、最初のブランド
Warby Parkerは2010年、名門ペンシルベニア大学ウォートン校に在籍していた4人の学生により設立されたアイウェアブランドです。テナント料や人件費がかからないオンラインストアのみで販売を開始。また、製造と販売を仲介するミドルマン(仲介業者)を排除し、デザイナーを社内に抱えることで、オシャレでありながらもコストパフォーマンスの良い製品の提供を実現しました。アイウェアについて、アメリカでは一般的に、製造コストの約10倍の販売価格設定がされています。そのなかで、Warby Parkerは、一般価格の1/4程度の価格での商品提供に成功しました。
Warby Parkerは、安価で高品質な商品を消費者に直接販売する「D2C(=Direct to Customer)」の草分け的存在となったわけです。
Warby Parker 公式サイト: https://www.warbyparker.com
D2C・DNBがバズっている理由
現在、ファッション業界でD2Cが流行している理由は、企業が店舗販売に頼らずともSNSを利用する事で簡単かつ詳しく宣伝や商品提供を行う事ができる「デジタルワールド」へ、この世が進化したからだと思います。さらにコロナ禍の現代においては、店舗ビジネスの売り上げが暴落。そのため、販売店を通さずECサイトで顧客に直接販売するD2Cスタイルを取り入れる企業が増えてきました。
オフラインを主流としてきたベテラン的ファッションブランドのD2C化のみならず、オンラインのみに「店舗」を持つDNB(=Digital Native Brand)も増えてきています。「BASE」や「STORES.jp」などのクラウドサービスを利用して、最短数分でECサイトのリリースが可能になったことも、インターネットという大都会にDNBが立ち込めている一因かと思います。アパレルのスキルを持っていないプレイヤーでも、魅力的なコンテンツやコミュニティ、クリエイティブ力を持っていれば成功する事ができる。
消費者も、ブランドコンセプトやストーリーが目視できるため、自己表現・自己実現としての消費が出来るのではないかなと思います。
ファッションの未来は液晶の中に展開されていく
テクノロジー化が始まった頃の人類は、実店舗に関して言えば「いつか店員が全てロボット化するのではないか」と考えていました。服を選ぶ際、営業してくれるのもロボット、レジで会計計算してくれるのもロボット、「ありがとうございました」と頭を下げるのもロボット。
でも現在は、その実店舗自体がインターネットというコンパクトかつ無限な空間に収束・オープンしつつあります。
そして、現在「服」は、身に纏う機能的な存在、というだけではなくなってきているような気がします。服を纏う体を「キャンバス」に見立てた時、服は自己表現をするためのいわば「絵具」だと言えるでしょう。「ファッション」は、時間やお金を費やす「趣味」であり、日常を忘れるための「娯楽」にもなりうると思います。
だからこれから、光るセンスや明確で確固たる哲学や思想を持ったファッションブランドが増えてくるのではないでしょうか。しかも誰でも足を運べる近い場所、液晶の中に。
世界中がご近所になる。そしたら私、今よりもっと仮想世界に没入してしまうな。でもそれもまた楽しみ。だって「デジタルネイティブ」としてこの世に生まれたんだから。楽しまなきゃ、この「デジタルワールド」を。