私が初めてネイルしたのは受験生の時。
受験生って自分の手先を見る時間長いから、ネイルしたら勉強のモチベーションになるかなって思った。
実際は、予約日当日サロンまでの道のりで延々と大粒の雨に降られて、この雨永遠に止まないんじゃないかななんて鬱蒼とした気分で歩いてた。

だから初めてのネイルはベースが雲色、雨が降ってる。
その雨と一緒に、金箔を降らせた。古代から永遠や不変の象徴とされていた金が、当時の私の気分の象徴となった。
当時の私は世界史の授業が大好きで、世界史の先生はギリシャ神話が大好きだった。だからよくギリシャ神話の話をしてくれた。
幼い頃から芸術を身近にして育った私は芸術を司る神アポロンが好きだった。のちにアポロンは、太陽神ヘリオスの神格を吸収して“太陽の神”となる。永遠の雨と分厚い雲の上に、太陽を昇らせた。その太陽も金色にした。
幸せのお裾分け

KOHHのWORST TOURの開催と、性別について札幌地裁の歴史的判決を喜び祝福するダブルミーニングのデザイン。
ライブに向けて、KOHHがディレクションを手掛け、地元である東京都北区王子に実店舗を構えるDogsのアイコン“ドッグスレインボー”をソースにしました。この“ドッグスレインボー”は、KOHHの好きなバランスでデザインされています。
Dogsのアイコンであるドッグスレインボーのネイルする決め手になったのは、この丁度1か月前、2021年3月17日。
札幌地裁にて、国が同性間の婚姻を認めないことが憲法14条1項で定められた平等原則に違反して違憲であるとする判決が言い渡されました。祝福されるべき歴史的な判決でした。全ての人に愛を込めて、絶対レインボーにしようって思った。
レインボーカラーはLGBTの象徴でもあります。
1976年、サンフランシスコの活動家であり芸術家、Gilbert Baker (ギルバート・ベイカー) によりLGBTを象徴するレインボーカラーはデザインされました。
右手はどんなデザインにしようかなって悩んでいたんだけど、Gilbert Bakerがレインボーカラーをデザインする以前、LGBTの象徴はピンク・トライアングルが担っていたことを思い出して。LGBTの多彩さのアイコンである、レインボーカラーとピンクが候補に挙がりました。
そしてKOHHがCBD feat. MonyHorse (2021) をリリース。そのMVの中でKOHHとMonyHorseが仲良くピンクの衣装を披露していて、もう導かれたかのようにレインボーカラーとピンクにしたよね。
見た目は厳つく鋭く、中身は優しく柔らかく

初めてのミラー・ネイルにして全爪ミラーのアヴァンギャルドなデザイン。
左手の薬指には彼の誕生日、19日の“19”を、アヴァンギャルドの貴公子Martin Margiela (マルタン・マルジェラ) のブランドMaison Margiela (メゾン マルジェラ) のカレンダータグと同様に丸で囲みました。
それに、毎日着けるお気に入りのアクセサリーが一気に10個も増えた気分だった。
毎日を特別にしてくれた魔法のネイル。
フルRIPNDIPコーディネート

当時お世話になっていた先輩がRIPNDIP (リップンディップ) のTシャツを贈ってくれて、そのTシャツをより可愛く着るために。
ロサンゼルスを拠点に活動する(ライアン・オコナー) のブランド、RIPNDIPのアイコンである中指を立てた猫「Lord Nermal (ロード・ナーマル)」を“主”としたデザイン。
Lord (ロード) は”主”や”主君”を意味し、Nermal (ナーマル) はアメリカにおいて猫に付ける一般的な名前とされています。
RIPNDIPの起源は2009年。当時、Ryan O’Connorのスケート仲間はみんな自分のブランドを持っていた。「自分も」と、スケートデッキのグリップテープに“RIPNDIP”と書いて滑り出したのがブランドの始まり。Ryan O’Connorが、母親のガレージに置いてあったプリンターを用いてプリントTシャツの製作を始めたことを機に、ブランドとして本格始動しました。
因みに“RIPNDIP”とは「スケートで技をきめて、かっこよく立ち去る」という意味。
“青春”は五行思想に由来しているんだよ

中国の陶磁器、染付。白色の素地の上に酸化コバルトを主とする顔料で模様を絵付したもので、藍青色に発色する模様は中国語で“青花”と呼ばれています。
宋代の1004年に官窯を始め、明清時代に栄えた陶磁器の名産地から引用して“景徳鎮ネイル”って、私とネイリストさんは呼んでた (笑)
人々はその“青花”の美しさに魅了され、染付はシルクロードを経てインド洋を渡り、インドやアラビア半島、さらにはアフリカ東岸にまでも齎されました。特にオスマン帝国の都イスタンブルに造られたスルタンのトプカプ宮殿には、美しい染付のコレクションが保管されているそうです。
因みに中国には「互いに影響を与え合い、その生滅盛衰によって、天地万物が変化し、循環する」木・火・土・金・水の5種類の元素から、この世の万物が成る、とする説“五行思想”があります。
五行思想において、青・赤・黄・白・黒の五色の中でも青は“木”に対応するとされており、春や樹木、永遠の命、前進を象徴します。景徳鎮ネイルは、後天性の喘息で毎週通院していた私のお守りでした。
Simplicity is the keynote of all true elegance.

クエンティン・タランティー ノ監督作品、1994年の「Pulp Fiction」(パルプフィクション) 。
“時間”という順序を無視したこの映画は、1994年のアカデミー賞では7部門にノミネート、そのうち脚本賞を受賞した。カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールを受賞。その他にも多くの賞を獲得しました。
作中で、ユマサーマン演じるミアウォレスが使用したことで話題になり、ポリッシュ初のソールドアウトを記録したCHANEL (シャネル) の LE VERNIS #18 ROUGE NOIR 通称 Vamp 風のデザイン。
本家に拘ってミアとお揃いの深爪に。そしてCoco Chanel (ココ・シャネル) の名言「シンプルさこそが、すべてのエレガンスのキーノート」を心に。
ライトとダーク、純潔と威厳

GUCCI (グッチ) の歴史を華やかに彩ってきたフローラを咲かせて。
2019年、日本限定で展開されたフローラ・コレクションは、従来のマルチカラーからロマンティックさを抽出し、アイボリー・ライトブルー・ライトピンク・オレンジ・ライラックの5色で再解釈されていました。
私はライトピンクをチョイス。
ライトピンクとは対照的なダークグリーンを宛がい、グルーミーな印象を演出。私にとっての安心材料である“違和感”を指先に展開して頂きました。
私が選んだフローラは凛とした佇まいの白百合。ギリシア神話の女神でありゼウスの妻、ヘラの乳房から零れた母乳が地上で百合になったとも言われており、その花言葉は、純潔と威厳。
指先と心の合掌。芸術崇拝者の信仰方法

過激なコンシューマリズムが渦巻く21世紀においてなぜエシカル消費が必要なのか。
それは、世界が不公平だからです。
今、あなたが聴いている音楽を、どこで、誰が、どのように作っているか知っていますか?
今、あなたが着ている服を、どこで、誰が、どのように作っているか知っていますか?
今、あなたが口をつけたマグカップを、どこで、誰が、どのように作っているか知っていますか?
おそらく殆どの人は知らないでしょう。なぜなら我々消費者は、作品を見ても、聴いても、手にしても、そのバックグラウンドのほとんどを受け取ることが出来ないからです。
“美しいもの”はどの時代にも必要です。芸術は、その美しさでいつも我々を癒してくれるはずです。

では、その“美しいもの”が誰かの苦悩から生まれていたとしたら?
“幸福の画家”ルノワールがそう呼ばれるようになったバックグラウンドを知っていますか?
1870年勃発した普仏戦争で、画家仲間であり親友だったフレデリック・バジールが戦死したからです。ルノワールは「人生にはこんなにも不快なことが多いのだから、これ以上不快なものは作りたくない」と、生涯を通じて楽しく美しい作品を描くようになったのです。
“幸福な画家”になるために、彼はどのくらい苦しんだのでしょう。その苦しみを理解できなくとも、彼は揺るぎない幸福を与えてくれます。
快楽を得るため、その道具として芸術を消費する度、我々はその消費行為を通じて、人を苦しめることに加担しているかもしれない。
そうならないためのGIVE & TAKE。作品とその作者を理解しようと努め敬愛することが出来るはずです。
あなたは与えることが出来ていますか。