6月。世界中で「プライド月間:Pride Month」とされるこの月、性の多様性が祝福され、LGBTの権利向上が呼びかけられる。

「LGBT」とは「レズビアン:Lesbian」「ゲイ:Gay」「バイセクシュアル:Bisexual」「トランスジェンダー:Transgender」の頭文字である。

「クエスチョニング:Questioning」すなわち自身の性のあり方を決めていない人、同時に「クィア:Queer」を示す「Q」と、「それ以外のものも含む」という意味の「+」を加え、性の多様性をとりこぼさないことを目指し「LGBTQ+」とも表記される。

いずれも、社会の大多数を占める「異性愛者:Heterosexual」とは異なる「性的指向:sexual orientation」を持つ人たちである。

#LGBTPRIDE の始まり、全てを包み込む #RainbowFlag

UNITED STATES – JUNE 28: Stonewall Inn nightclub raid. Crowd attempts to impede police arrests outside the Stonewall Inn on Christopher Street in Greenwich Village.
(Photo by NY Daily News Archive via Getty Images)


1960年代、彼らは、愛する人に触れるだけで犯罪者のような扱いを受けていた。

その社会的抑圧は惨憺たるもので、ゲイバーが警察によって踏み込みされることは日常的であった。さらには、キスや異性装、手を握っていたことや、その場に居合わせただけですら、拘束の理由とされていた。

1969年6月28日金曜日の夜、ニューヨークのゲイバー「ストーンウォール・イン (Stonewall Inn)」が警察による踏み込み捜査を受けた際、居合わせたLGBTの当事者らが初めて警官による迫害に真っ向から立ち向い、プライドを見せた。

人々は、この夜を「ストーンウォールの反乱:Stonewall riots」と呼び讃える。

Gilbert Baker wearing a white sequined dress (right).
He and other protestors triumphantly march the cut pieces of the mile-long flag past St. Patrick’s Cathedral.
Photograph by Charles Beal


過去のコラムでも少し触れたことがあるが「レインボーフラッグ:Rainbow flag」はLGBTの象徴とされている。

このレインボーフラッグとストーンウォールに纏わる有名な話がある。

レインボーフラッグは、アーティストのギルバート・ベイカー (Gilbert Baker) によって考案され、1978年6月25日にサンフランシスコで開かれたゲイ・フリーダム・デー (Gay Freedom Day) ではじめて使われた。現在のゲイ・プライド・パレード (Gay Pride Parade) の前身である。

そして1969年の“プライドの始まり”を記念して、毎年6月最終日曜日にニューヨークやサンフランシスコでプライド・パレードが開催されるようになった。

Gilbert Baker – Rainbow Flag, 1978
Credit: Gift of the designer
© 2021 The Museum of Modern Art


毎年パレードが繰り返され、ストーンウォールの反乱から25年を迎えた1994年。

ストーンウォール記念イベントに向けて、ベイカーは世界最大のレインボーフラッグを制作した。ベイカーとボランティアチームは、幅9m、基本6色で構成されたフラッグを数ヶ月かけて完成させた。

なんとこのフラッグが、ギネス・ワールド・レコーズで世界最大の旗として認定されたのである。

「意識」とは別名「思いやり」 #EqualityActJapan

Courtesy of EqualityActJapan


日本でも、東京オリンピック・パラリンピックを前にした現在LGBTへの関心が高まっている。

オリンピック憲章 (Olympic Charter 1996年版) のオリンピズムの根本原則第6項に「オリンピック・ムーブメントの目的は、いかなる差別をも伴うことなく … 平和でよりよい世界をつくることに貢献することにある」という文言がある。

これは、2014年、ロシアが「同性愛宣伝禁止法」を制定したことを受けて、2015年にオリンピック憲章を改訂し盛り込んだものである。

もちろん一概ではなく要因は多角的であるが、東京オリンピック・パラリンピック開催にあたって、日本がLGBTに関する差別をなくすために制度を整えるべきだとして、今、日本国内でもLGBTの権利が再考されている。

全ての人が生きやすい世界へと、変わるといいな。 あたしは、愛の力を信じて #日本にもlgbt平等法が必要です
@imma_tw on Twitter


また、東京オリンピック・パラリンピックを契機に行われる国際キャンペーンEqualityActJapanは、日本に「LGBT平等法」を制定するため署名活動を行っている。

世界的に見れば、LGBTに関する差別を禁止する法律を有する国が増えてきていることがわかる。

「性的指向:Sexual Orientation」による雇用差別を禁止している国の数は、全EU加盟国や、カナダ、アメリカなどを中心に、2019年時点で80カ国以上。

そしてG7のうち、日本以外の全ての国で、LGBTに関する差別を禁止する法律が整備されている。

Courtesy of Tokyo Rainbow Pride 2021


2021年5月24日、自民党は「LGBT理解増進法案」の審査を行った。

自民党の稲田朋美特命委員長は「世界で一つだけの理解増進法なんです」と話した。

そして、国会でさらに審議することが条件であるとはいえ、3時間半にわたる激論の末に法案は了承されたのだ。「性的指向および性自認を理由とする差別は許されない」と書かれたこの法案は、成立すれば、日本で初めて性的指向・性自認について定めた理念法となる。

話を戻すが、なぜEqualityActJapanが署名活動というスタイルに拘るのか。

「一人ひとりの意識を変える必要がある」ことを伝えたいのではないか。悪いのは国だけか。

あなたは、目の前で苦しんでいる彼/彼女に、声をかけましたか?手を差し伸べた?

「意識」とは別の名を「思いやり」というらしい。

自分を愛すること、安心させること #transjoy #transisbeautiful

“I’m really excited to act, now that I’m in this body.”—Elliot Page
 Wynne Neilly for TIME


海外では、カナダ出身の俳優エリオット・ペイジ (Elliot Page) が乳房切除後初めて上半身裸の写真を公開し、称賛を浴びている。エリオットは昨年12月に、自身がトランスジェンダーであることを公表していた。

「トランスジェンダー:Transgender」の人は、生まれた時に割り当てられた性別が自身の「性同一性:Gender identity」と異なる。

女性の性同一性を持ちながら出生時に男性と割り当てられた人もいれば、男性の性同一性を持ちながら出生時に女性と割り当てられた人もいる。

また、トランスジェンダーについて性別二元制からいえば、性同一性が女性でも男性でもない人 (ノンバイナリー、Xジェンダー、ジェンダークィア、エイジェンダーなど) もいる。

Trans bb’s first swim trunks #transjoy #transisbeautiful
@elliotpage on Instagram


エリオットは、2021年5月25日、水着姿でプールにいる自身の姿をInstagramで公開。

その笑顔の写真には「#transjoy (トランスの喜び) 」「#transisbeautiful (トランスは美しい) 」のハッシュタグが付けられている。

Apple TVで放映されたインタビューでエリオットは「シャワーを浴びて、腰にタオルを巻いて、鏡を見て『これが自分だ』と思った。パニックに陥ることもなくなった」と嬉しそうに話した。

生まれて初めて、自分の身体に安心することができたそうだ。

彼らしさ、彼女らしさ、自分らしさ。全ての #PRIDE に愛を

Marsha P Johnson and friend, Christopher Street Liberation Day, NYC, 1976
Credit: Biscayne/Kim Peterson


そもそも、性とはどのように決まるのか。

性の在り方は、以下の4つの要素をかけあわせることによってできるのではないかと考えられている。

  • 身体の性:身体つきなどの生物学的な性
  • 心の性:性自認している・自分が感じている性
  • 好きになる性 (性的指向):恋愛や性的関心がどの性別に向くか/向かないか
  • 表現する性:言葉遣いやしぐさ、服装など見た目の性別

そしてどの要素も、それを決定することができるのは他の誰でもなく自分自身。それを感じることができるのも、他の誰でもない自分自身である。

The mile-long rainbow flag being carried down First Avenue in New York City.
Photograph by Mick Hicks


例えば「“男性らしい”色は?」という質問があるとする。

あなたは何色と答えますか?

強い、知的な、情熱の、優しい、愛しいピンク、自由と包容の

・・・

一人ひとり、それぞれに色を思い浮かべるはずだ。

これと同じように、性のあり方はグラデーションで、一人ひとり、それぞれに性の在り方がある。

Photography: JD Moran


そしてもちろん、どんな色でもいい。一色に決めなくてもいい。黒で、青で、赤で、緑で、ピンクで、白でもいい。

また、好きになる性である「性的指向:Sexual Orientation」と心の性である「性自認:Gender Identity」の頭文字を取った「SOGI (ソジ) 」という言葉がある。SOGIは「性属性」を指す。

そのSOGIに関わらず、人はみな、尊重される権利と愛する自由を持っており、幸せになるべきである。

#PrideMonth 世界を虹色に。みんなで実現する #SDGs

“Everyone is Awesome”
Courtesy of LEGO


6月に向け、世界各地の企業がレインボーフラッグをモチーフにした商品の販売を相次いで発表している。

例えばVANSはレインボーのスニーカーを、ブロックのおもちゃで知られるデンマークの玩具メーカーLEGOは、色も髪型も違う11体のフィギュアのセットを来月から販売する。

多くの企業が多様性を尊重する姿勢を打ち出している。

アンバサダー サリー楓
TAYA NET.jp


当メディア「ashley」を運営するTAYAグループは、2021年度のTAYAアンバサダーにトランスジェンダーのサリー楓さんを迎えた。

TAYAは2021年、創業57年目を迎えるが、創業者田谷哲哉の信念であり当社の企業理念「すべての人に夢と希望を与えること」を実現すべく、創業時から「性別・年齢別・国籍別で差別をしない」ということも旗幟に掲げている。

持続可能な開発目標 (SDGs) を支援しているTAYAは、あなたを尊重し、あなたの自己表現・自己実現を、あなたと共に叶えます。

来る6月、虹色の幸せが沢山溢れますように。

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